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覚醒剤で逮捕されてしまったら、まず何をする?刑罰の種類・逮捕後の流れと初動対応

覚醒剤取締法は、覚醒剤の不正な製造、輸出入、所持、使用、譲渡、譲受などを規制する法律です。この法律では、覚醒剤に関連する行為を厳しく罰することで、社会秩序の維持と公衆衛生の保護を目的としています。今回のコラムでは、覚醒剤の刑罰から、実際に逮捕されてしまった場合、まず何をすればよいのか、弁護士の選び方などを解説いたします。


目次

1.覚醒剤の刑罰

覚醒剤の所持・使用に関する刑罰

①所持の場合:覚醒剤を不正に所持した場合、以下の刑罰が科されます

  • 10年以下の拘禁刑
  • 所持が営利目的の場合:1年以上の有期拘禁刑および500万円以下の罰金

②使用の場合:覚醒剤を使用した場合、以下の刑罰が適用されます

  • 10年以下の拘禁刑
  • 営利目的の使用(他者に販売するために試験的に使用した場合など):1年以上の有期拘禁刑および500万円以下の罰金

覚醒剤の製造・輸出入に関する刑罰

覚醒剤を製造または輸出入した場合、非常に重い刑罰が科されます。

①製造の場合

  • 1年以上の有期拘禁刑
  • 営利目的で製造した場合:無期もしくは3年以上の拘禁刑

覚醒剤の製造は、大規模な社会的被害をもたらす行為とみなされるため、特に重い刑罰が科されます。

②輸出入の場合

  • 1年以上の有期拘禁刑
  • 営利目的で輸出入した場合:無期もしくは3年以上の拘禁刑

覚醒剤の譲渡・譲受に関する刑罰

覚醒剤を他者に譲渡したり譲り受けたりした場合にも重い刑罰が科されます。

①譲渡の場合

  • 10年以下の拘禁刑
  • 営利目的で譲渡した場合:1年以上の有期拘禁刑、又は情状により1年以上の有期拘禁刑及び500万円以下の罰金

②譲受の場合

  • 10年以下の拘禁刑
  • 営利目的で譲り受けた場合:1年以上の有期拘禁刑、又は情状により1年以上の有期拘禁刑及び500万円以下の罰金

2. 逮捕された後の流れとスケジュール

覚醒剤事件での手続は、一般的に次の順序で進みます。

逮捕から検察送致まで(48時間以内)

警察は現行犯逮捕や令状逮捕の後、48時間以内に被疑者を検察庁へ送致しなければなりません。この間は家族との面会は基本的にできず、接見できるのは弁護士のみです。

勾留決定と期間(最大20日)

検察官は送致後、必要に応じて裁判所に勾留を請求します。勾留が認められると10日間、さらに延長10日間で合計最大20日間、留置場や拘置所に収容されます。

起訴・不起訴の判断

勾留期間中に検察が証拠と事情を精査し、起訴するか不起訴とするかを決定します。起訴されると裁判へ進みます。

3. 覚醒剤事件における証拠の扱い

覚醒剤事件では、尿検査の鑑定結果や押収された覚醒剤、使用器具、取引記録などが主要な証拠として用いられます。特に尿の鑑定は有力な証拠とされますが、その採取方法や検体の管理に違法性や不備があれば、裁判において証拠能力が否定される場合もあります。任意採尿の段階では拒否できる場合もありますが、拒否を続けると令状に基づく強制採尿が行われることがあります。押収や採尿の過程で違法捜査が行われた場合、それを立証できれば弁護側に有利な展開が期待できます。

4. 執行猶予が付くケースと付かないケース

刑法では、3年以下の拘禁刑で、かつ前科が一定条件を満たす場合に執行猶予を付けられます。覚醒剤事件での実務傾向は以下の通りです。

  • 執行猶予が付く可能性が高い:初犯、少量所持または使用のみ、非営利目的、深い反省と更生計画がある
  • 実刑となる可能性が高い:再犯、大量所持・使用、営利目的の取引や密輸、組織的犯行

裁判では、反省文や更生プログラムの受講、家族の監督体制などを示すことで情状酌量を狙います。

5. 弁護士選びの重要性と種類

弁護士は、身柄拘束の早期解放を目指すだけでなく、不当な取調べや違法捜査から被疑者を守り、有利な証拠や情状を積極的に収集します。逮捕直後は、供述の内容が後の裁判に大きな影響を及ぼすため、黙秘権を行使し、弁護士と相談してから発言することが極めて重要です。弁護士には以下の種類があります。

  • 当番弁護士:逮捕直後に1回だけ無料で接見できる制度で、初期アドバイスに有効です。
  • 国選弁護人:経済的理由で私選弁護士を依頼できない場合に選任することができます。原則勾留後から活動を開始します。
  • 私選弁護人:逮捕直後から依頼できるため、早期釈放や不起訴を目指した戦略的な弁護活動が可能です。

 特に私選弁護士は、逮捕直後から活動できるため、早期の釈放や不起訴の可能性を高められます。経済的事情で私選弁護人を選任することが難しい場合は、当番弁護士制度を活用すれば、逮捕直後に無料で弁護士と接見し、初期のアドバイスを受けることが可能ですが、当番弁護人や国選弁護人は、国や弁護士会からランダムで選任されるので、刑事弁護の経験が少ない弁護士が派遣されてくる場合もあることに注意が必要です。

6. 覚醒剤で逮捕されたときにすぐやるべきこと

覚醒剤取締法違反で逮捕された瞬間から、事態は急速に進展していきます。このときに何を選び、何を避けるかが、後の結果を大きく左右します。最初に意識すべきは、自らを不利な状況に追い込まないための「黙秘権」の行使です。取調べの場では、動揺や混乱からつい事実関係を曖昧に話してしまいがちですが、その一言が後に決定的な証拠として扱われることもあります。弁護士と相談する前に安易な供述をしてしまえば、取り返しのつかない不利益を招く恐れがあります。

次に、可能な限り早く刑事事件に精通した弁護士へ連絡を取ることが不可欠です。刑事事件は時間との戦いであり、初動の遅れが不利な展開を招くことがあります。経験豊富な弁護士であれば、身柄拘束の解放や不起訴の可能性を高めるための戦略を即座に立て、違法な取調べや証拠収集を阻止する働きかけも行ってくれます。

さらに、逮捕時に行われる採尿や家宅捜索、押収の過程については、できる限り詳細に記録しておくことが重要です。令状の有無、採尿の方法、押収物の種類や数量、捜査員の対応など、些細に思える情報が後に証拠能力を争う上で重要な材料となる場合があります。こうした記録は、弁護士が違法捜査を指摘する際の根拠にもなり得ます。

そして忘れてはならないのが、生活や職場への影響を最小限に抑えるための家族との連携です。突然の逮捕は、仕事や住居、社会的信用に直結する問題を引き起こします。家族に現状や今後の見通しを共有し、必要に応じて職場への連絡や生活基盤の維持を依頼することは、裁判が終わった後の人生の立て直しにも大きく関わります。

逮捕後の最初の数時間から数日は、事態を好転させるための最大のチャンスであり、同時に最も危険な時間でもあります。この限られた時間をいかに有効に使えるかが、自由を取り戻すための第一歩となるのです。

7. まとめ:覚醒剤事件はスピード対応がカギ

覚醒剤取締法違反の事件では、逮捕からの時間経過がその後の展開を大きく左右します。逮捕直後は不安や混乱から不用意に話してしまいがちですが、この段階での言動が後の裁判や処分結果に直接影響します。まず最も重要なのは、黙秘権を確実に行使することです。取調べの場で自ら不利になるような供述をしてしまえば、それが証拠として残り、後の弁護活動が極めて難しくなります。

そして、時間をあけずに刑事事件の経験豊富な弁護士へ連絡を取ることが不可欠です。刑事弁護に強い弁護士であれば、違法な取調べや証拠収集を防ぎつつ、勾留請求の阻止や早期釈放を目指すための具体的な戦略を立てます。また、状況によっては検察官との交渉により不起訴処分を獲得できる場合や、裁判に進んだ場合でも執行猶予付き判決を得られる可能性があります。

適切な初動対応を取れるかどうかで、勾留の有無、前科の有無、さらには社会復帰までの道筋が大きく変わります。逮捕は突然訪れるものですが、その瞬間から迅速かつ的確に行動することが、自由と未来を守るための唯一の方法なのです。

JIN国際刑事法律事務所

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