スピード違反で逮捕されるケース|逮捕後の流れと罰則についても

突然、夜道を走行中にオービスの赤いフラッシュが光ったり、後ろから白バイに呼び止められたとき、多くの方が強い不安を感じるものです。スピード違反は交通違反の中でも比較的多いとされますが、違反点数や反則金だけで済む場合もあれば、速度超過の程度によっては刑事事件として扱われ、免許停止や取消しに直結することもあります。とりわけ、仕事や生活に車の利用が欠かせない方にとって、運転資格を失うことは大きな打撃となりかねません。「少しスピードを出しすぎただけ」と軽く考えてしまうと、思わぬ重い処分を受ける可能性があります。今回の記事では、スピード違反で逮捕されるケース、罰則や逮捕後の流れなどを詳しく解説していきます。
1.スピード違反に該当する場合
自動車のスピード違反は、道路交通法で定められた「法定速度」や「規制速度」を超えて走行した場合に成立します。法定速度とは道路の種類ごとに決められた基本的な制限速度で、高速道路は原則100km/h、一般道は60km/hとされています。一方で、標識や標示によって特別に指定された速度制限がある場合には、それが「規制速度」となり、より優先されます。たとえば、住宅街の生活道路で30km/h制限の標識があれば、これを超えて走行すると違反となります。速度超過の程度によって扱いは大きく異なり、30km/h(高速道路では40km/h)未満の超過は反則行為として反則金と違反点数が科されますが、それを超える速度超過は刑事事件として扱われ、罰金刑や拘禁刑の対象となり得ます。オービスによる自動撮影や白バイ・パトカーによる現認で違反が立証されることが多く、特に大幅な速度超過は免許停止や取消しといった行政処分も伴います。つまり、スピード違反は「少し速く走っただけ」では済まず、運転資格や生活に直結する重大なリスクを抱える行為なのです。
速度超過の程度 | 扱い | 主な処分・罰則 |
30km/h未満(高速道路は40km/h未満) | 反則行為(交通反則制度の対象) | 反則金+違反点数(免許停止の可能性あり) |
30km/h以上(高速道路は40km/h以上) | 刑事事件として扱われる | 罰金刑または拘禁刑の可能性+免許停止・取消し |
50km/h以上(高速道路も同様) | 重大な刑事事件として扱われる | 拘禁刑・罰金刑の可能性大+長期の免許取消し |
2.スピード違反で逮捕される場合とその罰則
スピード違反をしてしまった場合、必ずしも逮捕されるわけではありません。具体的に逮捕される場合と、その罰則を解説します。
2-1. スピード違反で逮捕される場合
通常のスピード違反(30km/h未満の超過、高速道路では40km/h未満)は交通反則制度の対象となり、反則金と違反点数で済みます。そのため逮捕に直結することはまずありません。しかし、以下のようなケースでは逮捕に至る可能性があります。
- 大幅な速度超過
一般道で30km/h以上、高速道路で40km/h以上の超過は刑事事件扱いです。特に40〜50km/h以上の速度超過は「危険運転」に近いとされ、逮捕されるリスクが高まります。 - 悪質・危険な運転
極端なスピード違反を繰り返す、事故を起こした、逃走したなど、社会的に危険性が高いと判断されると現行犯逮捕や後日逮捕があり得ます。 - 呼び止めや出頭要請に応じない場合
白バイやパトカーに停車を求められて逃走したり、出頭命令を無視した場合も逮捕に発展します。
2-2. スピード違反の罰則
逮捕や送検に至った場合、次のような刑事罰が科される可能性があります。
- 一般道路で30km/h以上、高速道路で40km/h以上の超過: 6か月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金
- 特に悪質な場合(50km/h以上の超過など):より厳しい量刑が科されることもあり、拘禁刑の可能性も高まる
- 行政処分(免許関連):大幅超過の場合は免許停止や取り消し(最長で数年間の欠格期間)が伴う
つまり、スピード違反は「ただの違反金」で済む場合も多い一方、大幅な超過や悪質な運転では「逮捕 → 刑事罰 → 免許取消し」と重大な結果につながるのです。
3.スピード違反で逮捕された時のその後の流れ
大幅な超過や悪質な運転により逮捕されてしまった場合、以下のような刑事手続を遂行することになります。
3-1.現行犯逮捕・身柄拘束
大幅な速度超過や危険運転が確認されると、警察官によってその場で現行犯逮捕されることがあります。逮捕された場合、すぐにパトカーや警察署に連行され、所持品検査や身元確認を受けます。ここから「自由を奪われた状態」となり、原則として家に帰ることはできません。初めて逮捕を経験する人にとっては強い不安や混乱を伴います。
3-2.警察での取調べ(最長48時間)
逮捕後、警察署での取調べが始まります。警察は「どのくらいの速度を出していたのか」「なぜ速度を超過したのか」「危険運転の意識はあったのか」などを詳細に質問し、調書を作成します。この段階での供述は後の処分に大きく影響するため、軽率な発言を避けることが重要です。法律上、黙秘権が認められており、弁護士を呼ぶ権利もあります。
3-3.検察への送致(逮捕から48時間以内)
警察は逮捕から48時間以内に事件を検察庁へ送致しなければなりません。送致後、検察官が事件の性質や被疑者の態度を確認し、勾留を請求するかどうかを判断します。検察官が勾留を請求した場合は、裁判官が勾留の要否を審査します。
3-4.勾留決定(最長10日+延長10日)
裁判所が勾留を認めれば、身柄は警察署の留置場に最大で20日間拘束される可能性があります。速度超過が著しく、社会的に危険と判断されるケースや、逃亡・証拠隠滅の恐れがあると見られる場合に勾留が続きます。勾留中は外部との連絡が制限されるため、弁護士を通じて家族や職場に状況を伝えることが現実的です。
3-5.起訴・不起訴の判断
勾留期間の中で、検察官が起訴するか不起訴にするかを決定します。比較的軽度のケースでは不起訴処分や略式命令による罰金刑で終わることもありますが、重大な速度超過や悪質な再犯では正式裁判にかけられることがあります。起訴されれば、刑事裁判として記録が残り、前科が付く可能性も出てきます。
3-6.裁判・処分
略式裁判では、書面審理のみで罰金刑が言い渡されることが多いです。一方、正式裁判に進んだ場合には公開の法廷で審理され、拘禁刑(執行猶予付きの場合も多い)が科されることもあります。特に50km/h以上の速度超過は危険性が高く、社会的な非難も強いため、裁判所も重い処分を下す傾向にあります。
3-7.行政処分(免許関係)
刑事処分とは別に、道路交通法に基づく行政処分が行われます。違反点数に応じて免許停止や取り消しが決定され、特に50km/h以上の超過は免許取消しが一般的です。取消処分を受けると、再取得までに最長で数年の欠格期間が設けられるため、生活や仕事に大きな影響を及ぼします。
4.スピード違反で弁護士に依頼するメリット
スピード違反で逮捕されてしまった場合、できるだけ早期に弁護士に依頼することが大切です。弁護士に依頼することで、以下のメリットが得られます。
- 早期釈放の可能性を高められる:弁護士は身柄拘束の必要がないことを検察や裁判所に主張し、勾留を避けることや、勾留されても短期間での釈放を実現できるよう活動します。仕事や家庭に大きな影響を与える長期の拘束を防ぐためには、弁護士の働きかけが不可欠です。
- 取調べへの適切な対応をサポート:警察や検察の取調べでは、被疑者に不利な内容が調書に残されやすい傾向があります。弁護士が早い段階から関与することで、供述の仕方や黙秘権の使い方をアドバイスし、意図しない不利な調書作成を防ぐことができます。
- 処分の軽減・不起訴の可能性を探れる: 大幅な速度超過でも、反省の姿勢や再発防止策を示すことで不起訴処分や略式罰金処分に留められる場合があります。弁護士はそのための情状主張や証拠提出を戦略的に行います。
- 被害者対応・示談交渉:スピード違反で人を轢いてしまった場合や物損事故を起こした場合、被害者との対応は非常にデリケートです。弁護士が間に入ることで、適切な謝罪や補償を行い、被害感情の悪化を防ぐことができます。示談が成立すれば、不起訴処分や刑の軽減につながる可能性が高まります。
- 重大事故での実刑回避の可能性:死亡事故や重傷事故に至った場合、拘禁刑の可能性も高まります。弁護士は裁判での弁護活動を通じて、執行猶予付き判決の獲得など、社会復帰の可能性を最大限に広げることができます。
5. スピード違反で依頼できる弁護士の種類
スピード違反で逮捕されてしまった場合、どのような弁護士に依頼することができるのでしょうか。弁護士には、自ら選任する私選弁護人と国が選任する、国選弁護人があります。
5-1.私選弁護人(任意で依頼する弁護士)
私選弁護人とは、自分で選んで依頼する弁護士です。費用は依頼者の自己負担ですが、迅速な対応や手厚いサポートが期待できます。逮捕直後から接見可能です。刑事事件や交通事故に詳しい弁護士を選ぶことにより、早期釈放や勾留回避が望めます。また、取調べへの助言や調書確認など、被疑者に有利な戦略を柔軟に立てられ、被害者がいる事故の場合には、示談交渉なども行ってくれます。ただし、費用は事前に確認しておく必要があります。事件の内容や事務所により着手金・報酬金が異なります。
5-2.国選弁護人(費用は公費負担)
国選弁護人とは、被疑者が逮捕・勾留され、経済的に弁護士を依頼できない場合に裁判所が選任する弁護士です。費用は原則として公費負担のため、経済的負担はありません(流動資産が50万円以下である場合に依頼できます。)。ただし、弁護士は裁判所により指定されるため、自分で選ぶことはできず、どんな弁護士が選任されるかはわからないので、私選弁護士ほど柔軟で手厚いサポートは難しい場合があります。
6.スピード違反を刑事事件専門の弁護士に依頼するメリット
前述のとおりスピード違反で逮捕されてしまった場合、弁護士を選任することができますが、可能な限り、私選で、刑事事件専門の弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士といっても、その専門分野は様々で、民事、企業法務、税務、相続、離婚などと、それぞれ得意分野があります。弁護士だからといって、必ずしも刑事事件の経験があるとは限らないのです。
刑事事件専門の弁護士であれば、逮捕直後の接見や警察・検察への対応に慣れています。早期に関与することで、勾留回避や短期釈放の可能性を高め、長期間の身柄拘束による生活・仕事への影響を最小化できます。また、取調べでは軽率な供述が調書に記録され、刑事処分に大きく影響することがあります。刑事専門弁護士は、どの段階で何を話すべきか、黙秘権の行使や供述内容の注意点を的確に指導し、不利な記録の作成を防ぎます。速度超過が大きい場合でも、事情聴取や証拠の精査を通じて、処分の軽減や不起訴処分の獲得を目指します。たとえば、反省や再発防止策、社会生活上の事情を主張することで、罰金刑や略式命令で済む可能性が高まります。
7. 弁護を依頼した時の流れ
当事務所にご依頼いただいた場合の対応の流れは以下のとおりです。
- 電話・メールでのご相談:まずはお電話、または公式ホームページのお問い合わせフォームからご連絡ください。初回のご相談は無料で承っております。少しでもご不安な点がある場合は、ためらわずご連絡ください。(緊急性の高い事案では、リモートでの契約が可能です。また、依頼者の方が逮捕・勾留されている場合は、速やかに接見に伺います。)
- 初回相談:お電話などでお聞きした事件の概要をもとに、弁護士に詳細をご説明いただき、今後の方針についてご相談いただきます。正式に受任される場合は、必要書類にご署名いただき、受任手続を行います。
- 事実関係の調査・弁護方針の決定・示談交渉・接見:弁護士が警察や検察から情報を収集し、事件の全体像を把握したうえで、最適な弁護方針をご提案します。被疑者が逮捕・勾留されている場合は速やかに接見を行い、お話を伺ったうえで必要な助言を行います。被害者がいる場合には、依頼者に代わって示談交渉を行います。
- 捜査対応:被疑者に不利な供述調書が作成されないよう、取り調べへの立ち会いや意見書・反省文の提出など、捜査段階での対応を行い、不起訴を目指します。「接見等禁止」が出ている場合は解除の申立てを行い、家族や友人と会えるよう手配します。また、不当な勾留に対しては「勾留決定の取消し」や「準抗告」を申し立て、できるだけ早く通常の生活に戻れるよう対応します。
- 裁判対応:起訴された場合は、裁判に向けた準備を行い、法廷での証人尋問などを通じて弁護活動を行います。
8. スピード違反で逮捕された場合の解決事例
当事務所ではスピード違反をはじめ、様々な交通犯罪を扱ってきました。以下は解決事例の一例です。
【速度超過】捜査段階から攻防を尽くして、依頼者に有利な判決を獲得
本件は、法定速度をほぼ100キロ超過して走行した事案です。警察からの呼び出し直後にご依頼いただきました。
捜査段階から取り調べに同行し、何とか罰金刑での処理を目指して検察官と粘り強く交渉を行いました。担当検事は略式起訴に前向きな姿勢でしたが、速度超過が法定速度のほぼ100キロという重大な事案であったため、略式起訴にとどまることはほとんどなく、公判請求となりました。
裁判では、禁固刑以上の刑を受けると職を失う可能性が高いこと、また既に贖罪寄付等により事件への反省を示していることなど、できる限りの主張を尽くしました。結果として罰金刑の獲得には至りませんでしたが、検察官の求刑よりも大幅に減刑された判決を得ることができました。
【交通違反】度重なる交通違反の前科があったものの、執行猶予判決を獲得した事案
交通違反は、免許停止や免許取消といった行政処分だけで済むとは限りません。重大な違反では、罰金刑や拘禁刑などの刑事罰が科されることがあります。交通違反の「前科」が重なるほど、罰金刑ではなく実刑判決などの拘禁刑を受ける可能性が高まります。
本件の依頼者は、過去に何度も交通違反の前科があり、今回も違反をしてしまったという事案でした。ご家族の全面的な協力を得て、再発を防げる環境整備を行いました。その結果、判決では弁護人の主張がほぼ認められ、執行猶予付きの判決が下されました。
その他の解決事例は下記リンクをご覧ください
交通犯罪|解決事例|刑事弁護のプロフェッショナルJIN国際刑事法律事務所
9.まとめ:スピード違反で逮捕された場合は速やかに刑事事件専門の弁護士に相談しよう
スピード違反で逮捕された場合、まず重要なのは速やかに刑事事件を専門とする弁護士に相談することです。前述のとおり、交通違反の中でも特に速度超過が著しい場合、単なる行政処分では済まず、罰金刑や拘禁刑などの刑事罰が科される可能性があります。刑事事件として扱われると、前科がつくことで今後の免許更新や社会生活に大きな影響を及ぼすこともあるため、初動の対応が非常に重要です。
逮捕直後の段階では、被疑者の供述や態度がその後の処分に大きく影響します。警察や検察は、被疑者の反省の有無や供述内容を記録に残すため、取り調べの内容が今後の裁判や処分に直接関わってきます。ここで弁護士が関与することで、不利な供述調書の作成を防ぎ、適切な助言を受けながら対応することが可能になります。また、弁護士は接見を通じて事件の詳細を把握し、被疑者本人の立場や状況を検察官や裁判所に伝えることもできます。さらに、弁護士は示談交渉や反省の意思表示など、量刑や処分を軽くするためのあらゆる手段を講じます。例えば、被害者がいる場合には示談交渉を代理で行い、誠意を示すことで刑事罰を軽減できる場合があります。また、再発防止策により、裁判での情状酌量の要素を整えることも可能です。
スピード違反による逮捕は、初動対応次第で結果が大きく変わる可能性があります。逮捕直後から専門の弁護士が関与することで、勾留阻止や不起訴処分の可能性を高めることができ、万一公判請求となった場合でも、減刑や執行猶予獲得に向けた戦略を立てやすくなります。したがって、スピード違反で逮捕された場合は、迷わず迅速に刑事事件専門の弁護士に相談することが、最も有効な対応策と言えます。少しでも不安を抱えている方は、ご遠慮なくお電話ください。


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