合意の上だったのに…訴えられた場合勝てないの?|不同意性交等・不同意わいせつ

「合意の上だったはずの性行為が、ある日突然“犯罪”として扱われてしまった」――これは決して他人事ではありません。近年、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪といった新たな法制度の導入により、性行為をめぐるトラブルが刑事事件へと発展するケースが増えています。たとえ当人同士の認識では合意があったとしても、合意の有無や伝わり方、状況の解釈がずれれば、一方の主張だけで刑事告発に発展する可能性もあるのです。警察から突然呼び出しを受けたり、逮捕された場合には、混乱や不安に陥るのも当然です。しかし、こうした状況では冷静な対応が求められます。まずは事実関係を正確に整理し、法的な視点からの助言を受けることが不可欠です。本稿では、合意の有無が争点となる性犯罪の構造と、万が一、容疑をかけられてしまった場合にどのように対応すべきかを解説します。
1. 不同意性交等・不同意わいせつとは
まず、不同意性交等・不同意わいせつとはどのような犯罪なのでしょうか。
次の①または②の状況で、性交やそれに類する行為を行った場合は「不同意性交等罪」(5年以上の拘禁刑)、またはわいせつな行為を行った場合は「不同意わいせつ罪」(6か月以上10年以下の拘禁刑)が成立する可能性があります。
※「性交等」とは、性交・肛門性交・口腔性交に限らず、膣や肛門への陰茎以外の身体の一部や器具の挿入も含みます。また、「わいせつな行為」には、抱きつく、キスをする、胸を触る、陰部・お尻に触れる、衣服を脱がせるなどが該当します。
①「一定の理由」により、相手が性的行為の同意について意思形成・表明・実行が困難な状態になる、またはそのような状態に便乗して行為を行うケース
ここでいう「一定の理由」とは、以下の8つです:
- 暴行や脅迫を加える、または受けたこと:暴行とは人に対する不当な物理的力の行使、脅迫は相手を怖がらせる害悪の告知です。
- 身体的・精神的な障害がある、または障害を負わせること:知的障害・発達障害・精神障害等の一時的な障害も含まれます。
- 酒や薬物の影響下にさせる、またはその影響下にあること:飲酒や薬の摂取をさせたり、それによる判断力低下を指します。
- 眠っている、あるいは意識がぼんやりしている状態にあること:睡眠中または意識が混濁している状況です。
- 同意を拒否する機会や時間を与えないこと(不意打ち):行為が行われるまでに十分な意思決定の猶予がない場合。
- 予想外の状況に驚かせたり怖がらせること、またはその結果フリーズ状態になること:強い不安や動揺によって正常な判断ができない状態です。
- 虐待の影響で心理的に抵抗が難しくなること:過去の虐待体験により、拒否が無意味だと感じるなど。
- 経済的・社会的立場による圧力や不利益をほのめかすこと:拒否したことで不利益があると感じる場合も含まれます。
②わいせつ行為でないと誤解させたり、他人と間違わせる、またはその誤解に乗じる場合
③加えて、13歳未満の子ども、または13歳以上16歳未満の子どもに対して行為者が5歳以上年上である場合も、不同意性交等罪・わいせつ罪が成立し得ます。
2. 不同意性交等・不同意わいせつ罪が成立する可能性のある行為
具体的にはどのような行為が不同意性交等・不同意わいせつとなるのでしょうか。
従来の法律では、性交等の犯罪成立には暴行または脅迫が必要でした。しかし、法改正後は「同意があったかどうか」が中心的な判断材料となっています。そのため、暴力や脅しがなくとも、相手の同意がなかったと認められれば、処罰の対象となる可能性があります。
例えば次のような状況でも、罪に問われることがあります:
- 出会って間もない相手に対し、無理に性行為をした場合
- 酩酊状態の相手をホテルへ連れて行って性行為をした場合
- 寝ぼけて意識がはっきりしない相手と性行為をした場合
今回の改正は、被害者が置かれた状況や心情をより丁寧に扱うことで、適切な保護を目的としています。ただし、その一方で、同意があったはずの行為でも訴えられてしまうケース、いわゆる冤罪リスクも増加しています。たとえば「飲酒のうえ合意のもとで性行為をしたのに、後日相手から被害を訴えられた」という相談も増えています。
3. 同意があったと考えていたのに訴えられたら
マッチングアプリなどで出会った相手と合意のうえで性行為をしたつもりが、後から「同意がなかった」と訴えられたり、金銭を求められる(いわゆる美人局)事例も増えています。
なかには、相手のパートナーに関係が知られてしまい、自身の立場を守るために「実は同意していなかった」と虚偽を訴えるケースもあります。そうしたリスクを避けるためにも、安易な性的関係には注意が必要です。
もっとも、行為の都度、明確な書面や録音で同意を残すのは現実的ではありません。また、性行為自体が暗黙の了解で進むことも多く、密室での出来事である以上、同意の有無を立証するのは非常に難しい面があります。
したがって、「同意があった」と考えていたにもかかわらず訴えられた場合には、以下の対応が重要です:
- 落ち着いて状況を整理する:どのような経緯で訴えに至ったかを客観的に整理し、やり取りの内容や時系列を記録しておきましょう。
- 証拠を確保する:同意を示すメッセージや写真、動画などを保存します。日付や場所なども記録しておくと有効です。
- 相手に連絡しない:感情的に連絡したくなる場合もありますが、直接のやり取りが不利な証拠として使われるおそれがあります。
- 第三者の証言を考慮する:当時の状況を知る知人がいれば、その証言が重要な材料になることもあります。弁護士の助言を得ながら進めましょう。
- 黙秘し、安易な事情聴取対応を避ける:不意に捜査対象となった場合は、安易な事情聴取を避け、黙秘し、調書にサインはせず、弁護士の立ち会いを求めましょう。
4. 同意があったことを証明するには
「同意があった」ことを示す可能性のある証拠には、次のようなものが挙げられます。
- メッセージやSNSのやり取り:行為前後のテキストの内容から、合意がうかがえるものがあれば有用です。
- 音声・映像の記録:同意の様子が記録されていれば、重要な証拠となり得ます。
- 性行為後の対応:行為後に友好的なやりとりがあった場合なども、同意があったと判断される材料となる場合があります。
- 書面・同意アプリなどでの取り決め:事前に同意確認がなされていた場合は一定の証拠になりますが、必ずしも決定的ではありません。
- 相手の行動や態度:拒否する様子がなく、むしろ積極的だったことが確認される場合などは有用です。
- 第三者の証言:当時の状況を知る人物の証言も、場合によっては有力な証拠となります。
こうした証拠は慎重に扱う必要があり、個人での収集は限界があります。刑事弁護の専門家に相談することで、より有効に対応することができます。
5.不同意性交等の時効|過去の性交等について訴えられることはある?
不同意性交等罪には、公訴時効が設けられています。2025年現在、この罪の公訴時効は15年です。公訴時効とは、検察が刑事裁判を通じて被疑者を訴えることができる期間を指します。この期間は、原則として犯罪行為が終了した時点から起算されます。
もし時効が成立すれば、検察はそれ以降、被疑者を起訴することができません。有罪か無罪かにかかわらず、訴追そのものが不可能となり、刑事手続は打ち切りとなるのです。
このような時効制度は、長期間が経過することで証人の記憶が曖昧になったり、証拠が失われたりすることによって、誤った有罪判断が下されるおそれ、いわゆる冤罪リスクを防ぐために設けられています。しかし、逆にいうと15年もの間、過去の性交等について訴えられる可能性はあるということです。
6. 弁護士に相談するメリット
不同意性交等での訴えや逮捕に直面した場合、すぐに弁護士へ相談すべきです。弁護士に依頼することで、次のような利点があります:
- 適切な法的助言が得られる:状況に応じてどの証拠を提出すべきか、どう対応すべきか、法的に有利な選択ができます。
- 証拠収集のアドバイスが受けられる:街中の防犯カメラ映像やGPSの記録、第三者の証言など、後々役立つ証拠を確実に保全できます。
- 警察・検察とのやり取りに対応できる:取調べで不利な供述を避けるため、黙秘権の行使や調書への署名拒否も含めた対応を取ってくれます。
- 交渉や示談の代行が可能:直接相手と連絡を取ることなく、弁護士を通じて冷静かつ法的に適切な交渉が可能です。示談により不起訴や早期釈放が実現することもあります。
7. 不同意性交等・不同意わいせつでは、どのような弁護士に依頼すべき?
こうしたケースでは、「刑事事件」を専門とする弁護士に依頼するのが最善です。弁護士にも民事、相続、企業法務などさまざまな分野がありますが、不同意性交等のような刑事案件は、専門の経験をもつ弁護士でなければ対応が難しいことが多いです。
特に2023年の改正法は比較的新しいため、最新の判例や実務運用を熟知しているかどうかが大切です。刑事弁護士であれば、より的確かつ有利な戦略を提案してもらえます。
8. 同意がなかったと訴えられてしまったら勝てない?
2023年の法改正により、被害者保護が強化された反面、「同意がなかった」との訴えだけで処罰されるリスクが高まっています。これはつまり、被害者の供述が重視される一方で、被疑者の無実を証明するためのハードルが上がったということです。しかし、訴えられてしまった、逮捕されてしまったからといって、「勝てない」わけではありません。誤認逮捕や冤罪を防ぐためには、刑事事件の専門家による冷静な証拠精査と、供述の整理・反証が重要となります。
9. 不同意性交等・不同意わいせつで訴えられてしまったら、早めのご相談を
不同意性交等で訴えられた場合や、これからどう対応すべきか不安な方は、刑事弁護を専門とする弁護士に相談してください。
当事務所では、性犯罪に関する多数の事件に対応しており、依頼者の立場に立った丁寧なサポートを行っています。
解決事例の一部はこちらからご覧ください。性犯罪|解決事例|刑事弁護のプロフェッショナルJIN国際刑事法律事務所
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