
突然、家族が逮捕されたという知らせを受けたとき、多くの⼈は混乱し、どう対処すればよいのか分からなくなります。しかし、逮捕後の対応は非常に重要であり、最初の⾏動がその後の流れに⼤きく影響します。このコラムでは、家族が逮捕された際にまず取るべき初期対応と、弁護⼠に相談するべき理由を分かりやすく解説します。冷静に正しい⼿順を踏むことで、⼤切な家族を守るための⼒となるはずです。
1. 家族が逮捕された場合に必要な初期対応
【1】逮捕の事実と状況を確認する
家族が逮捕されたと聞いたとき、まずすべきことは、事実関係を落ち着いて確認することです。
- いつ逮捕されたのか
- どこで逮捕されたのか
- どの警察署に⾝柄があるのか
- どのような容疑で逮捕されたのか
- 家族が⾯会できるのか(接⾒禁⽌が出ている場合、弁護⼠以外は⾯会できません)
をできるだけ正確に把握します。突然の逮捕に焦燥しますが、まずは所在と容疑の確認を優先し、以後の対応につなげていきます。
【2】弁護⼠に相談・依頼する
逮捕後の初動として、弁護⼠への相談は最も重要な対応の⼀つです。逮捕から72時間以内に勾留されるかどうかが決まるため、早い段階で信頼できる弁護⼠を探すことが⼤切です。弁護⼠は、勾留阻⽌、釈放の交渉、家族との連絡⽀援など、多⽅⾯で重要な役割を果たしてくれます。
弁護⼠の選び⽅については、後述6.をご参照ください。
【3】接⾒可能な場合は接⾒や差し⼊れをする
接⾒が可能な場合は、⾝分証明書の提⽰や⾯会時間の制限があるため、事前に必要な準備をしておくことが⼤切です。逮捕された本⼈は、突然の拘束によって強い不安や孤独感を抱えていることがほとんどです。接⾒の際は、まず落ち着いて話を聞き、否定や詰問をせず、冷静に励ます姿勢を⼼がけましょう。家族の存在は、本⼈にとって⼤きな⽀えになります。警察署や留置場では、私物の利⽤に制限がありますが、認められた範囲で⽇⽤品や書籍)を届けることが可能です。また、外の様⼦や家の状況など、本⼈が気にしていることを伝えるのも安⼼材料となります。接⾒には時間・場所・持ち込み制限があります。警察署ごとに異なるため、事前に確認が必要です。接⾒禁⽌が出ている場合は、家族でも⾯会できません(この場合は弁護⼠のみ⾯会が可能です。)。
【4】必要な準備を進める
家族が逮捕された後は、⽣活⾯や⼿続に関する準備も進める必要があります。たとえば、今後保釈が認められた場合に備えて「保釈⾦」の準備を検討したり、本⼈の⾝分証明書、健康保険証、通帳、印鑑などの重要書類を整理しておくと安⼼です。また、携帯電話の契約や公共料⾦の⽀払い、住居の管理など、本⼈が⽇常的に⾏っていた事務や⽀払いを誰が引き継ぐのかを早めに考えることが⼤切です。郵便物の確認やSNS・メールの対応にも注意が必要です。逮捕によって⽣活が突然⽌まることになりますが、周囲ができる限りの⽀援を⾏い、環境の維持に努めましょう。
【5】学校や職場への連絡を検討する
逮捕された本⼈が学校や職場に通っている場合、今後の影響を考慮して、⽋席・⽋勤の連絡をどのように⾏うか検討が必要です。無断で⽋席や⽋勤が続くと、失踪や⾃⼰都合と誤解されてしまう恐れがあります。しかし、逮捕の事実をどのように伝えるかは⾮常に慎重に判断すべき問題です。情報を必要以上に伝えると、本⼈の社会的信⽤や今後の⽣活に⼤きな影響を与えかねません。できれば弁護⼠に相談し、適切な伝え⽅やタイミングについて助⾔をもらうのが望ましいです。連絡内容は「家庭の事情で⼀定期間休む」など、事実に触れずに説明する⽅法も⼀つの選択肢です。
【6】継続的な⽀援を意識する
逮捕後の⼿続は⻑期化する可能性もあり、家族として継続的に⽀える姿勢が⼤切になります。まずは警察や検察、裁判所とのやりとり、弁護⼠からの説明などを丁寧に記録しておくと、後の対応に役⽴ちます。
2. 逮捕から裁判までの流れと各段階での注意点
2-1. 逮捕(⾝体拘束の始まり)
刑事事件で警察が犯⾏の疑いを持った場合、捜査の⼀環として「通常逮捕」(警察が事件の証拠や状況から、被疑者が逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断して⾏う逮捕。逮捕状が必要です。) 、「現⾏犯逮捕」(犯罪⾏為を現に⾏っている、または直後にその場で逮捕するもので、逮捕状は不要です。警察官や⼀般⼈も⾏えます。)、「緊急逮捕」(通常逮捕の要件は満たすが、逮捕状を取得する時間がない緊急の場合に⾏う逮捕。逮捕後、速やかに逮捕状の請求が必要です。) のいずれかが⾏われます。逮捕には、被疑者を⼀時的に拘束することで逃亡や証拠隠滅を防ぐ⽬的があります。
逮捕されると、警察署の留置場に⾝柄を拘束され、最⻑48時間以内に検察庁へ送致(送 検)されます。この段階で、家族がすぐに接⾒できるとは限らず、特に接⾒禁⽌の決定が 下された場合、弁護⼠以外の⾯会は制限されます。
注意点:この初動段階で弁護⼠に連絡し、法的⽀援を受けることが⾮常に重要です。逮捕の連絡を受けた家族は、前述のとおり、いつ、どこで、どのような容疑で逮捕されたのか、どの警察署に⾝柄があるのか、⾯会の可否などを聞きましょう。
2-2. 送検と勾留請求(48時間以内)
警察は、逮捕後 48時間以内に検察官へ事件を送致します。検察官は⾝柄と事件資料を精査し、さらに被疑者を拘束する必要があると判断した場合、裁判官に対して勾留請求を⾏います。勾留が認められれば、原則 10 ⽇間(延⻑含め最⼤ 20 ⽇間)の拘束が可能になります。
注意点:勾留が決定されると、⼼⾝の負担も⼤きくなります。弁護⼠が適切に勾留阻⽌を申し⽴てたり、準抗告などの法的⼿段をとることもできます。
2-3. 勾留期間中の取り調べと起訴判断
勾留中、被疑者は取り調べを受けます。ここでの供述や証拠が、今後の起訴・不起訴の判断材料となります。勾留の最終⽇(最⼤ 20 ⽇⽬)には、検察官が「起訴」または「不起訴」の判断を下します。
起訴された場合、被疑者は「被告⼈」となり、刑事裁判が始まることになります。不起訴の場合は、⾝柄が解放されます。
注意点:取り調べにおける⾃⽩の強要や不適切な圧⼒がかかる可能性もあるため、弁護⼠による接⾒で冷静さを保つことが重要です。取り調べは黙秘権を含めて慎重に対応する必要があります。
2-4. 起訴後の流れ(公判前)
起訴されると、裁判が開かれるまでの準備段階に⼊ります。家族が弁護⼠と連携しながら、保釈の申請や裁判に向けた準備を⽀援することも可能です。
注意点:起訴後は報道の対象になる場合もあり、家族や職場への影響が懸念されます。社会的信⽤や今後の⽣活を守るため、情報管理と対応を慎重に⾏う必要があります。
2-5. 裁判(公判)と判決
裁判では、検察官が証拠や証⼈をもとに⽴証を⾏い、弁護⼈が反証・弁護活動を⾏います。被告⼈が罪を認めている場合は、情状酌量の余地を訴えることが中⼼になります。無罪を主張する場合は、反証や証拠の争いが重要となります。
裁判官は、事実認定と量刑判断を経て、判決(有罪・無罪/罰⾦・拘禁刑など)を⾔い渡します。有罪判決が出た場合も、⼀定期間内であれば控訴が可能です。
注意点:裁判は、特別な事情がない限り、家族が傍聴することもできます。被告⼈の精神的⽀えとして、家族が法廷に⽴ち会うことも⼤きな意味を持ちます。
2-6. 判決後の対応
執⾏猶予がついた場合は、刑務所には⾏かず、⼀定期間の再犯防⽌を条件に社会で⽣活できます。実刑判決が出た場合は、刑務所に収容され、服役が始まります。
家族は、刑の内容を踏まえて今後の⽣活⽀援や再出発の準備を⾏うことが求められます。出所後の就労⽀援や住居の確保など、⻑期的なサポートが必要になるケースもあります。
3. 家族の逮捕が及ぼす影響
逮捕されると、本⼈だけでなく家族全体に多⽅⾯で⼤きな影響が及びます。まず精神的な⾯では、突然の逮捕という衝撃により家族は強い不安や混乱、孤⽴感を抱きやすくなります。逮捕理由や今後の⾒通しが不透明な中で、⼼配が膨らみ、⽇常⽣活にも⽀障をきたすことが少なくありません。また、社会的な影響も無視できません。近所や職場、学校などでの噂や誤解が広がり、家族の信⽤や⼈間関係に影響を及ぼす場合もあります。さらに経済⾯でも、逮捕された本⼈が働けなくなることによる収⼊減少や、保釈⾦などの負担が家計を圧迫します。加えて、家庭内の役割分担が変わり、残された家族の負担やストレスが増すことも多いです。
こうした状況において、弁護⼠の役割は⾮常に重要です。弁護⼠は逮捕直後から法的⼿続を代理し、被疑者の権利を守るために動きます。例えば、接⾒を通じて本⼈の状況を把握し、警察や検察と交渉し、勾留の阻⽌や保釈申請を⾏います。また、法的な観点から家族にも分かりやすく状況説明を⾏い、不安を軽減する⼿助けをします。さらに、裁判に向けての準備や弁護活動を通じて、最善の結果を⽬指します。
4. 逮捕された家族とのコミュニケーション⽅法
前述のとおり、接⾒等禁⽌が出ている場合は、家族は被疑者と会ったり、⼿紙を送ることができません。このときのコミュニケーション⼿段は⾮常に限られますが、逮捕直後から弁護⼠に依頼している場合は、弁護⼠を通じてのコミュニケーションが可能です。家族の気持ちや伝えたいことを弁護⼠に伝え、本⼈に届けてもらうことができます。弁護⼠から本⼈の状況を聞くことも重要です。
接⾒禁⽌がない場合は、家族も警察署や留置場で⾯会することができます。接⾒時は本⼈の話をよく聞き、否定や批判を控えることが⼤切です。⾯会時間や差し⼊れには制限があるので、警察署に確認しましょう。また、取り調べ内容については詮索せず、刑事事件を専門とする弁護⼠に任せることが望ましいです。
5. 弁護⼠に相談するべき理由
突然家族が逮捕されると、本⼈も家族も強いショックを受け、混乱した状況に陥ります。逮捕されると刑事⼿続が迅速に進むため、何をどう対応すればよいのか分からず⼾惑うことも多いです。そんな時にこそ、弁護⼠に早期に相談することが⾮常に重要です。ここでは、家族が逮捕された際に弁護⼠に相談すべき5つの理由を解説します。
5-1. 法的知識と経験に基づく具体的なアドバイスが得られる
逮捕や勾留、取り調べ、起訴、裁判など刑事事件の流れは複雑で、法律や⼿続に詳しくない⼀般の⽅には⾮常に分かりづらいものです。刑事事件専門の弁護⼠であれば、刑事⼿続における豊富な経験とノウハウを持っています。逮捕後の対応のタイミングは非常に重要であり、早期に行動しなければ、本⼈の権利や利益が⼤きく損なわれる恐れがあります。刑事事件に精通した弁護⼠に相談すれば、現在の状況の説明や今後の⾒通し、取るべき⼿続などを具体的に教えてもらえるため、不安を軽減しながら冷静に対応できます。
5-2. 効果的な弁護活動により、被疑者の権利を守ることができる
逮捕された本⼈は警察や 検察の厳しい取り調べに直⾯しますが、その過程で不当な圧⼒や誤解による⾃⽩強要のリ スクがあります。弁護⼠は被疑者の権利を守るため、接⾒を通じて本⼈の状況を把握し、違法な取り調べがないか確認します。
また、弁護⼠が早期に介⼊することで、勾留阻⽌や保釈申請など、被疑者の⾝体拘束を最⼩限に抑えるための⼿続を迅速に⾏うことが可能です。これにより、⻑期間の拘束による精神的・⾝体的負担を軽減し、本⼈の防御権を最⼤限に守ることができます。
5-3. 捜査の不透明な部分を解明し、具体的な対応を促すことができる
逮捕されると、家族は事件の詳細や捜査の進展について⼗分な情報を得られないことが多く、不安や疑問が膨らみます。弁護⼠は警察や検察と連絡を取り、捜査内容の確認や不適切な取り扱いがないかをチェックします。これにより、家族が知らない間に不利益を被ることを防ぎ、透明性のある捜査を促すことが可能です。
家族が警察や検察から直接情報を得ることは難しい場合が多く、弁護⼠を通じて事件の進捗や対応⽅針を把握できます。また、弁護⼠から家族へのアドバイスによって、今後の対応策や法的⼿続に関する理解が深まり、家族としての⽀援がスムーズに⾏えます。
5-4. 逮捕後の迅速な対応による社会的な不利益回避
逮捕後、刑事事件に精通した弁護⼠が早期に介⼊することで、勾留請求を防いだり、保釈を速やかに申し⽴てることが可能となり、⾝体拘束の期間を最⼩限に抑えられる可能性が⾼まります。これにより、職場や学校への⽋勤が短縮され、信⽤や⼈間関係の悪化といった社会的影響も軽減されます。特に逮捕後の対応が遅れると、本⼈不在による誤解や不信感が周囲に広がる恐れがあるため、弁護⼠の迅速な⾏動が、社会⽣活の維持に⼤きく貢献します。
5-5. 裁判に向けた準備や戦略を⽴てるための専門的な知識に基づいたサポート
逮捕後、事件が起訴されれば裁判が始まります。裁判でも、証拠の検討や証⼈尋問、情状弁護など複雑な⼿続が必要です。刑事事件に精通した弁護⼠であれば、被告⼈の有利になる証拠収集や法的主張を⾏い、適切な弁護戦略を⽴てることができます。
6. 弁護⼠の選び⽅
家族が逮捕された場合、早期に弁護⼠へ相談することが⾮常に重要ですが、特に刑事事件を専門にする弁護⼠を選ぶことが、今後の結果に⼤きく影響します。刑事事件は⼿続が複雑でスピードも早いため、経験豊富な弁護⼠でなければ適切な対応が難しいこともあるためです。
まず、弁護⼠には「当番弁護⼠」「国選弁護⼈」「私選弁護⼈」の3つの種類があります。
当番弁護⼠は、逮捕直後の被疑者に対して1回のみ無料で接⾒を⾏う制度で、家族が申し込むことも可能です。緊急時の初期対応として利⽤価値が⾼く、制度を通じて本⼈の状況をいち早く知ることができますが、当番弁護⼠は弁護⼠会からランダムで選任されるので、どのような分野が得意な弁護⼠が来るかはわかりません。
国選弁護⼈は、経済的な理由などで私選弁護⼠を依頼できない場合、裁判所が選任してくれる弁護⼠です。費⽤負担は少ない⼀⽅で、弁護⼠の選定は⾃分ではできず、必ずしも刑事事件に強い弁護⼠が担当になるとは限りません。
⼀⽅で、私選弁護⼈は家族が⾃ら選んで依頼する弁護⼠で、費⽤は⾃⼰負担ですが、刑事事件の実績や相性を重視して依頼できます。刑事事件に特化した弁護⼠であれば、早期釈放や不起訴の獲得、裁判での有利な弁護活動において⼒強い味⽅になります。
刑事事件に精通している弁護⼠を⾒分けるには、まずその弁護⼠が「刑事事件を専⾨的に取り扱っているか」を確認することが重要です。弁護⼠には⺠事や相続、企業法務など幅広い分野がありますが、刑事事件は迅速な対応と専⾨的な知識が求められるため、豊富な刑事弁護の実績があることが信頼の第⼀条件となります。具体的には、弁護⼠の事務所のウェブサイトや所属事務所の紹介ページなどで、「刑事事件の取り扱い件数」「解決事例」「どのような事件を担当してきたか」などを確認しましょう。
また、初回相談の際に、依頼者の話をしっかりと聞いてくれるか、対応の早さや説明の丁寧さも⾒極めポイントになります。刑事事件では時間が⾮常に重要なため、すぐに接⾒に⾏けるフットワークの軽さや、状況を家族に分かりやすく説明できるコミュニケーション⼒は不可⽋です。
最後に、同業者は業界のことを⼀番よく知っているので、知り合いに弁護⼠がいる場合は、その弁護⼠から、刑事事件に強い弁護⼠を紹介してもらう⽅法もあります。信頼できる弁護⼠を⾒極めて選ぶことが、結果的にご家族の助けにつながります。
7. 弁護⼠への依頼のタイミング
家族が逮捕された場合、弁護⼠への依頼は「早期の依頼」が極めて重要です。逮捕直後は警察や検察による取り調べが始まり、供述や態度がその後の処分に⼤きく影響するため、早期に弁護⼠が介⼊することで、不当な取り調べや⾃⽩の強要を防ぐことができます。また、勾留阻⽌や保釈請求など、⾝体拘束を回避するための対応も迅速さが求められます。被疑者との接⾒や家族への情報共有も弁護⼠が担うため、早期に相談・依頼することが、ご本⼈の権利と⽣活を守る第⼀歩です。
8. 家族が逮捕された場合は刑事事件専門の弁護士に相談しよう
突然の逮捕は、家族にとって⼤きな不安と混乱をもたらします。こうしたときこそ、刑事事件に専門に扱う弁護⼠に相談することが⾮常に重要です。刑事⼿続はスピードと正確さが求められ、対応を誤ると不利な状況に陥りかねません。
刑事事件に強い弁護⼠は、勾留を避けるための早期対応、警察・検察との交渉、保釈申請、起訴前の⽰談交渉などに精通しており、ご本⼈の権利を守る⼒強い味⽅となります。また、被疑者との接⾒を通じて状況を正確に把握し、ご家族にも適切な情報を共有してくれるため、不安を軽減しながら具体的な対応が可能です。
家族の未来を左右する重⼤な局⾯だからこそ、刑事事件の経験と知識が豊富な弁護⼠に相談することが、最善の⼀歩です。


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