未成年(少年)の犯罪で前科はつく?逮捕後の流れと対策、事例についても
もし大切な我が子が逮捕されてしまったら、どうすればよいのでしょうか。また、ご自身が少年の場合も、今後どのような刑事手続を経るのか、不安を抱えている方もいらっしゃることでしょう。この記事では、少年が逮捕された場合の刑事手続の流れや前科の有無、少年法の仕組みについて解説します。
1.未成年とは|少年法が適用される年齢は?
成人年齢が18歳に引き下げられたことから、未成年とは18歳未満の者を指します。(「少年」というと一般的に男子を想像しますが、性別を問わず「少年」と呼びます。)ただし、18歳および19歳についても「特定少年」として少年法が適用されます。従来は少年=未成年でしたが、成人年齢の引き下げにより、18歳および19歳は「成人ではあるが、少年法上は少年に該当する」状態となっています。
少年法が適用される年齢と処遇は以下のとおりです。
- 14歳未満(触法少年)
刑事責任能力がないため、刑事罰は科されません。主な対応として、保護者による監督指導、児童相談所による指導・介入、必要に応じて児童自立支援施設や児童養護施設への送致が考えられます。殺人などの重大事件では、家庭裁判所の審判を経て少年院送致が可能です。 - 14歳以上~16歳未満
刑事責任能力はありますが、原則として家庭裁判所の保護処分の対象です。警察による補導・逮捕後、家庭裁判所に送致され、審判により保護観察、児童自立支援施設送致、少年院送致などが決定されます。検察官送致(逆送)は原則としてありません。 - 16歳以上~18歳未満
原則は保護処分ですが、殺人や強盗致死などの重大事件では検察官送致(逆送)され、成人と同様の刑事裁判を受けることがあります。この場合、実刑の可能性もあります。 - 18歳・19歳(特定少年)
2022年改正少年法により新設された区分です。原則として保護処分ですが、逆送の範囲が拡大され、重大事件では刑事裁判にかけられる可能性が高まっています。 - 20歳以上
少年法は適用されず、通常の刑事手続が適用されます。
※逆送とは
家庭裁判所が事件を検察官に送致する手続です。少年事件は通常、保護処分(保護観察、少年院送致など)を前提としますが、重大事件や更生困難と判断された場合、刑事処分が相当として検察官に送致されます。特定少年では、逆送の対象が拡大され、実名報道が解禁される場合もあります。
以上をまとめると、以下の表のようになります。
14歳未満 | 触法少年。刑事責任なし、児童相談所や家庭裁判所の対応 |
14~15歳 | 家裁の審判、保護処分中心(逆送は原則なし) |
16~17歳 | 原則保護処分だが、重大事件は逆送・刑事裁判あり |
18~19歳 | 特定少年。原則保護処分だが、重大事件は原則逆送・刑事裁判あり(改正法により逆送の範囲が拡大) |
20歳以上 | 通常の刑事裁判。少年法の適用なし |
2.少年の犯罪で逮捕されるケースとその後の流れ
2-1. 未成年(少年)の犯罪で逮捕されるケース
1.では少年法の適用年齢を解説いたしましたが、実際にどのようなことをしたら、未成年(少年)が逮捕されてしまうのでしょうか。以下の5つの例が挙げられます。
- 重大な犯罪を犯した場合:殺人、強盗、強制性交等、傷害事件、放火といった重大犯罪を犯した場合、未成年(少年)少年であっても逮捕される可能性が高いです。被害の重大性や再犯のおそれが考慮されます。
- 反復・継続的な非行:万引きや暴行などの比較的軽微な非行であっても、それを繰り返している場合や、警察の警告に従わない場合には、逮捕されることがあります。
- 逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合:逃亡する可能性がある、または証拠を隠滅するおそれがあると判断されると、未成年(少年)でも逮捕の対象となります。これは成人と同様の逮捕理由です。
- 共犯事件に関与している場合:成人と一緒に重大な事件を起こした場合や、集団で犯罪に関与したと見なされる場合には、社会的影響も考慮されて逮捕されやすくなります。
- 家庭や学校の指導が困難な状況:家庭や学校での指導が困難で、更生の見込みが薄いと判断される場合、保護の観点から逮捕に至ることもあります。
ただし、前述のとおり、14歳未満は原則逮捕されない日本の法律では、14歳未満の未成年(触法少年)は刑事責任を問われません。原則として逮捕されることはなく、代わりに児童相談所が対応します。(事件の重大性や家庭環境によっては、家庭裁判所へ送致されることもあります。)
2-2.未成年(少年)が逮捕されてしまった場合の刑事手続の流れ
未成年者(少年)が逮捕された場合、年齢に応じて少年法が適用され、成人と異なる特有の刑事手続が適用されます。ここでは、14歳以上の少年に対する一般的な流れを説明します。
まず、警察により逮捕されると、最大48時間以内に検察へ送致されます(これを「送検」といいます)。その後、検察官は家庭裁判所への送致に向けた判断を行い、必要に応じて勾留や観護措置を請求します。少年の場合は勾留ではなく、少年鑑別所に一時的に収容される「観護措置」が取られることが多く、その際に本人の性格や非行の原因が専門的に調査されます。
その後、事件は家庭裁判所に送致されます(全件送致主義)。家庭裁判所では、少年審判が行われ、本人の性格、生活環境、非行の背景を踏まえて、適切な処分が検討されます。直ちに処分を決定できない場合には、「試験観察」という措置が取られ、数か月間、家庭裁判所調査官のもとで生活態度が観察されます。処分としては、「不処分」「保護処分(保護観察、児童自立支援施設送致、少年院送致といった処分)」、または「検察官送致(逆送)」があります。拘禁刑に相当する場合で、成人と同様に刑事裁判を受けることになります。
このように、少年の事件では、本人の更生と社会復帰を重視した柔軟な対応が取られており、処分も個別の事情を考慮して慎重に決定されます。家族や関係者による支援も、再非行防止に向けて非常に重要です。
3. 未成年(少年)の犯罪での前科の有無
3-1.前科と前歴
まず、「前科」とは「刑事裁判において有罪判決が確定し、刑罰を受けた経歴」のことを指します。これは法律上も社会的にも重要な意味を持ち、就職や資格取得などに影響を与える場合があります。一方で、「逮捕された」「補導された」「警察に事情を聞かれた」だけでは前科にはなりません。これらは一般的に「前歴」と呼ばれ、記録には残るものの、刑罰を受けていないため、前科とは区別されます。
少年法における基本的な考え方は、「少年は未熟であり、教育によって立ち直る可能性が高い」という理念に基づいています。そのため、犯罪にあたる行為をしても、家庭裁判所における「保護処分」が中心となり、刑事罰を与えるのではなく、教育的措置が取られます。
3-2. 保護処分は前科になる?
家庭裁判所における保護処分には、以下のようなものがあります。
1. 保護観察処分:地域社会での生活を続けながら、保護司の指導・監督を受けます。
2. 児童自立支援施設への送致:非行傾向がある少年を施設に収容し、更生教育を行います。
3. 少年院送致:より重い非行や再非行といった場合に、少年院で教育・矯正を行います。
これらはいずれも刑罰ではなく、保護的・教育的な措置であるため、法的には「前科」には当たりません。保護処分は前科ではないため、通常、企業の採用において「前科があるか」と聞かれた際には「ない」と答えることができます。また、国家資格や公務員試験の受験にも直接的な支障は基本的にありません。また、少年事件では、保護処分を受けた記録が「前歴」として関係機関に残ることはありますが、それが公に開示されることは原則としてありません。また、成人と異なり、再犯防止や更生支援の観点から一定期間を経過すれば記録の消去や閲覧制限が設けられます。
3-3. 逆送された場合は前科がつく
個々の事案によりますが、たとえば、16歳以上の少年が人を死亡させた事件(殺人、強盗致死といった事件)や、重大な傷害、性犯罪、放火、強盗といった凶悪事件、再犯性が強く、保護処分では更生が困難と判断された場合は、逆送される可能性が高まります。また、2022年4月からは18歳・19歳の「特定少年」に対して、逆送の対象が拡大され、重大事件では原則逆送されることになりました。これにより、成人とほぼ同様に前科がつくケースが増えています。前科がついてしまうと、場合によっては履歴書に記載しなければならないことがあります。また、司法書士、警察官、弁護士などの資格受験に、一定期間の受験制限が課せられる場合があります。
4. 未成年(少年)に前科をつけないための対策
- 事件を重くしない(早期の反省・謝罪):被害者がいる場合は、できるだけ早く謝罪し、可能であれば示談(賠償を含む)を結ぶことが非常に重要です。示談が成立すれば、審判や処分が軽くなる可能性が高まります。示談をする場合は、刑事弁護に精通した弁護士に依頼することをおすすめいたします。少年が関わる場合、正しい手続で作成されていないと、裁判所や検察、家庭裁判所で評価されにくくなります。また、示談の過程で言い争いになったり、感情的なもつれから新たなトラブルが生まれる可能性があり、示談において被害者が「脅された」「圧力をかけられた」と感じれば、逆に処分が重くなるおそれもあります。
- 保護者の誠意と協力:家庭環境が安定している、保護者がしっかり監督できると認められた場合、家庭裁判所が「保護処分なし(不処分)」と判断することもあります。家庭での更生が可能と判断されることは、処分を軽くする重要な要素となります。
- 弁護士に早めに相談する:少年事件に精通した弁護士に依頼すれば、被害者との示談だけでなく、取調べ対応や家庭裁判所への準備などを適切にサポートすることが可能です。これにより、不要な逆送や厳しい処分を回避できる可能性が高まります。
- 試験観察や保護観察で真剣に更生に取り組む:家庭裁判所が更生の可能性を見極めるために行う「試験観察」や「保護観察」は、本人の反省や態度の変化を見る重要な期間です。ここで真面目に取り組めば、より軽い処分が期待できます。
- 逆送を回避する:重大犯罪であっても、誠意ある反省や家庭の協力体制、弁護士の支援がある場合は、家庭裁判所が逆送せず、少年事件として扱う可能性があります。逆送されなければ、前科はつきません。
5.未成年(少年)事件を刑事事件専門の弁護士に依頼するメリット
未成年(少年)事件を刑事事件専門の弁護士に依頼するメリットは多々あります。中でも一番の利点は、刑事事件に精通した弁護士には、少年事件の専門的知識と経験が豊富にあるため、依頼者にとってその時点の最善の一手を導くことができます。少年事件には、成人の刑事事件とは異なる「少年法」という特別な法律が適用されます。刑事事件に精通した弁護士は、少年法の手続きや特有の処分を熟知しているのはもちろん、法の改正など常に新しい情報をアップデートしており、的確に対応できます。
また、少年事件では、初動が極めて重要です。刑事事件に強い弁護士なら、早い段階で少年の身柄拘束を回避・早期解放を目指し、社会や学校への影響も最小限にします。被害者がいる事件の場合には、示談交渉を迅速に行うことで、不処分や審判不開始の可能性を高めることができます。
万が一審判になってしまった場合でも、刑事事件に強い弁護士がついていれば、家庭裁判所に提出する意見書の作成や、審判への同席・意見陳述を通じて、よりよい結果(不処分・保護観察など)を目指します。
6.未成年(少年)の犯罪で学校(高校・大学)を退学にならないための対策
未成年(少年)が犯罪に巻き込まれてしまった場合、退学処分にならないかという点も気になるところでしょう。退学にならないための対策としては、以下が考えられます。
- 反省文・誓約書の提出:本人が真摯に反省し、今後は非行をしないという意思を文書にして提出します。さらに、保護者からも「家庭での監督・支援体制を強化する」といった誓約を添えると、学校への説得力が増します。
- 家庭・生活環境の改善を示す:生活態度の改善や、外部支援(カウンセリング、少年サポートセンターといった機関)を受けていることを証明すれば、「本人が更生に向かっている」と判断され、処分が緩和されることがあります。
- 学校の指導方針を確認し、謙虚に従う:学校によっては、「停学処分→反省期間→復学許可」のように段階的な対応をとるケースもあります。一方的に反論せず、学校の方針に協力的な姿勢を見せることが重要です。
- マスコミ対応などの情報共有:事件がマスコミやSNSで拡散された場合、学校に対する世間の目を考慮して処分が厳しくなることがあります。早期に学校側と情報共有を行い、外部への対応についても協力体制をとることが望ましいです。
7. 未成年が逮捕された場合の解決事例
当事務所では、少年事件を数多く扱ってきました。以下は一例ですが、他事例も解決事例のページをご参照ください。
【傷害事件・不処分】
暴走族を抜ける仲間に対し、集団で暴行したとして逮捕された少年の事件です。被害者は2名おり、そのうち1名は全治3か月の重傷でした。ご両親から依頼を受け、逮捕直後から接見・対応を開始しました。迅速に事情を把握し、捜査への対応を助言しました。その結果、重傷者に対する関与については否認が認められ、不起訴処分に。もう1名の被害者については示談を成立させました。家裁送致後は観護措置が取られましたが、速やかに不服申立てを行い、観護措置は取り消され、少年は自宅に戻れました。ご家族と協力して生活環境を整え、少年本人とも面談を重ねて反省を深めた結果、最終的に家庭裁判所で不処分となりました。少年の更生と家族の支えが実を結んだ事案です。
【傷害】全治3か月の怪我を負わせた疑いで逮捕されるも、不処分に|解決事例|刑事弁護のプロフェッショナルJIN国際刑事法律事務所
【殺人未遂事件・長期の少年院送致を回避】
同級生との喧嘩の中で、割れたビール瓶で相手の首付近を刺してしまい、殺人未遂として扱われた事件です。少年は当初から一貫して殺意を否認しており、捜査段階から少年審判に至るまで、私たちもその主張を支え続けました。審判では未必の故意が認められ、殺意そのものは認定されましたが、事件に至った背景や家庭環境、少年の性格や反省の姿勢といった少年側の事情も丁寧に主張・立証しました。その結果、裁判所にも一定の事情が考慮され、長期間にわたる少年院送致という厳しい処分は避けられました。一貫した主張と丁寧な弁護活動が、少年の更生の機会を守る結果につながった事例です。
【殺人未遂】一貫した主張で、長期間の少年院送致を回避|解決事例|刑事弁護のプロフェッショナルJIN国際刑事法律事務所
【窃盗事件・不処分】
複数の書店で万引きを繰り返していた少年が逮捕された事案です。ご両親から依頼を受け、弁護活動を開始しました。少年は窃盗を認め、被害店舗へ謝罪の意思を示していたため、弁護人を通じてすべての書店と示談を成立させました。また、警察の取調べにも同席し、少年が話しやすい環境で供述できるよう支援しました。早期の弁護活動が功を奏した事案です。
【窃盗】窃盗を繰り返していた少年が、少年審判の結果、不処分となった事案|解決事例|刑事弁護のプロフェッショナルJIN国際刑事法律事務所
8. 未成年の犯罪でお悩みの場合は刑事事件専門の弁護士に相談しよう
大切なお子様が犯罪に関与したという知らせを受けたとき、多くの保護者は非常に焦燥されることでしょう。手続や対応が大きく異なり、適切な対処を誤った場合、将来に大きな影響を及ぼす可能性があります。そうしたときこそ、刑事事件を専門とする弁護士に相談することが重要です。
少年事件では、「少年法」という特別な法律が適用され、警察・検察による捜査に加えて、家庭裁判所での審判を経て処分が決まります。刑事事件に精通した弁護士であれば、少年法の制度に精通しており、逮捕直後からの対応や家庭裁判所での手続まで、一貫してサポートすることが可能です。
例えば、早期に被害者と示談を成立させたり、観護措置(少年鑑別所への送致)を回避するために不服申し立てを行ったりと、少年にとって最も有利な結果を目指して行動します。また、事件の背景にある家庭環境や本人の性格、反省の意思などを丁寧に伝えることで、保護観察や不処分といった柔軟な処分へ導くことも可能です。
何より、少年とご家族の不安を軽減し、将来に向けた法的な観点から最適な道筋を提示するのが、刑事事件を専門とする弁護士の大きな役割です。依頼者の権利を守るためにも、早めの相談をおすすめします。


お問い合わせ
Contact
まずはお気軽にご相談ください。
-
メールフォームからお問い合わせ
-
お電話からお問い合わせ
03-6772-3587平日9:00~18:00