器物損壊で弁護士が必要なケースとは?|弁護士の選び方や流れも
他人や公共のものを壊してしまった場合、器物損壊罪に問われる可能性があります。今回の記事では、器物損壊罪になり得るケースや、逮捕されてしまった場合の流れや弁護士の選び方をご紹介します。
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1.器物損壊罪とは
器物損壊罪は、刑法第261条に規定されており、①故意に②他人のものを③損壊または傷害すると成立します。
- 故意:故意とは、過失ではなく、「壊そう」、「壊れても構わない」という意思を持つことをいいます。
- 他人もの:他人のものとは、不動産や動産、動植物などすべてのもの(ペットなども、法律上は物として扱われます。)、また、公共のものも含みます。ただし、「自分の物」であっても、共有物の場合は他人の権利を侵害する場合があるため、器物損壊罪が成立する可能性があります。
- 損壊または傷害:物理的に壊すだけでなく、そのものを使えなくする行為(例えばパソコンのデータを削除する、食器に放尿する)も含まれます。また、「傷害」には、ペットなど動物を殺傷したり、病気にさせたり、隠したりする行為が含まれます。
罰則は『3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料』と規定されています。また、器物損壊罪は被害者の意思を重視する親告罪です。親告罪は、被害者の告訴が必要であり、告訴がなければ起訴されません。
器物損壊罪が成立する具体的な例は以下のとおりです。
- 他人の車に傷をつける。
- 他人の家/公共の施設の窓ガラスを割る。
- 他人のスマートフォンを故意に地面に投げつけて壊す。
- 公共施設の看板やベンチを破壊する。
- 他人の服にインクをこぼして使用不能にする。
- 他人の食器に放尿する
- 他人のパソコンのデータを削除する
- 他人のペットを逃がす
- 他人の家畜を殺傷する
器物損壊罪が成立しない、または問われにくいケースは以下のとおりです。
- 過失による損壊:誤って他人のスマホを落として壊した場合など、わざとではない行為は器物損壊罪が成立しない場合があります。ただし、故意か過失かは本人の言い分 からだけではなく、客観的な事実から総合的に判断されます 。また、故意でない場合、器物損壊罪が成立しなかったとしても、民事上の損害賠償責任を負うことになります。
- 正当な理由がある場合:警察官が職務としてドアを破壊して救助活動を行う場合など、損壊行為に正当な理由がある場合、器物損壊罪は成立しません。
- 合意がある場合:持ち主の同意を得て破壊した場合、器物損壊罪は成立しません。
- 14歳以下が器物損壊した場合:14歳以下のこどもについては刑事責任を問われませんが、民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。
2.器物損壊罪で弁護士に相談が必要なケースとは?
前述のとおり器物損壊罪は親告罪であるため、被害者の告訴がなければ起訴されません。しかし、場合によっては弁護士への依頼が必要になることがあります。以下、弁護士に依頼したほうがよいケースと、依頼せずに様子を見てもよいケースについて説明します。
器物損壊罪で弁護士に相談が必要なケース
1. 逮捕・勾留された場合
器物損壊罪は比較的軽い犯罪と思われますが、被害の程度や状況によっては逮捕される可能性があります。逮捕・勾留されると仕事や学業、日常生活に支障が出るため、早期釈放を目指して弁護士に依頼すべきです。弁護士がいれば、勾留を回避するための弁護活動や、(保釈など)勾留された場合に勾留を争う手続きをスムーズに進めることができます。
2. 被害者と示談を進めたい場合
器物損壊罪は親告罪であるため、被害者との間で示談が成立し、告訴を取り下げてもらうことができれば不起訴となります。しかし、個人で示談交渉を進めるのは難しく、むしろ感情的な対立が悪化することもあります。弁護士が介入することで、適切な賠償額の提示や示談書の作成など、円滑な解決が可能になります。示談成立後に告訴を取り下げてもらうことで、刑事事件化を防ぐことができます。
3. 共犯者がいる場合や他の罪と併合される場合
器物損壊罪単独では比較的軽い罪ですが、共犯者がいる場合や他の犯罪(暴行罪・脅迫罪・建造物損壊罪など)と併せて起訴される場合、刑が重くなる可能性があります。例えば、集団で嫌がらせ目的で物を壊した場合や、暴力を伴って損壊した場合などは、器物損壊罪だけでなく、別の犯罪も問われる可能性があり、弁護士に相談したほうがよいでしょう。
4. 被害者が告訴すると明言している場合
被害者が「絶対に告訴する」「示談には応じない」と言っている場合、刑事事件に発展する可能性が高くなります。このような場合、弁護士に依頼し、被害者との交渉や今後の対応についてアドバイスを受けることが重要です。
弁護士に依頼せず、様子を見てもよいケース
1. 軽微な損壊で、被害者が告訴しない意向を示している場合
例えば、友人の持ち物を壊してしまったが、謝罪して弁償し、被害者が「気にしない」と言っている場合、告訴される可能性は低いため、弁護士に依頼しなくてもよいでしょう。ただし、後からトラブルにならないように、弁償の内容を簡単に書面に残しておくと安心です。
2. 過失による損壊で、刑事事件にならない場合
器物損壊罪は「故意」が必要なため、誤って壊してしまった場合には成立しません。例えば、他人のスマホをうっかり落として壊した場合は、器物損壊罪ではなく民事上の損害賠償問題となります。このような場合、弁護士に依頼しなくても、保険を利用するなどして対応できます。
3. 警察が事件として扱わない場合
被害者が警察に被害届を出したものの、警察が「犯罪性がない」と判断した場合、刑事事件にはなりません。例えば、家庭内や職場内の問題で「単なるトラブル」として処理されるケースなどが該当します。このような場合、無理に弁護士を依頼する必要はありません。
4. 被害者と直接話し合い、示談が成立した場合
被害者と円満に示談が成立し、「告訴しない」との確約が取れている場合、弁護士を依頼しなくてもよいことがあります。ただし、示談内容を文書にしておかないと、後で「そんな約束はしていない」と言われる可能性があるため、示談書の作成だけでも弁護士に相談すると安心です。
器物損壊罪で弁護士に依頼すべきかどうかは、事件の重大性、逮捕の有無、被害者の対応などによって異なります。逮捕される可能性がある場合や、被害者が告訴を検討している場合は、早めに弁護士に依頼するのが賢明です。一方で、軽微な損壊で被害者が告訴しない意向を示している場合や、過失による破損などは、様子を見ても問題ないでしょう。状況が不明確な場合は、無料相談などを利用して、弁護士の意見を聞いてみるのも一つの手です。当事務所ではホームページからのお問合せや、お電話などで無料相談を行っておりますので、弁護士に依頼すべきかどうかの判断に迷う場合、まずはご連絡ください。
3.器物損壊罪で逮捕された後の流れ
器物損壊罪で逮捕されると、以下のような刑事手続を経ることになります。
3-1. 逮捕
器物損壊罪で逮捕されるケースには、大きく分けて 現行犯逮捕 と 通常逮捕 の2種類があります。逮捕されると、警察署に連行され、留置されます。逮捕後48時間以内に警察は被疑者を検察庁に送致するかを判断します。
(1) 現行犯逮捕:犯行現場で警察官や一般市民により逮捕されるケースです。器物損壊は比較的軽微な犯罪であるため、警察が後日逮捕状を請求して逮捕するケースよりも、現行犯逮捕のほうが多く見られます。
(2) 通常逮捕:被害者の届け出や防犯カメラの映像、証言などの証拠が揃い、警察が逮捕状を請求して逮捕するケースです。逮捕状が裁判官によって発行され、警察が自宅や職場に出向いて逮捕することになります。
3-2. 取調べ
逮捕後、警察は被疑者に対して事情聴取(取調べ)を行います。取調べの結果を踏まえ、警察は検察に事件を送致するかどうかを決めます。取り調べの際、被疑者は供述を拒否する権利(黙秘権)を持っています。自身に不利なことを無理に話す必要はありません。また、被疑者には弁護士を呼ぶ権利があり、接見(面会)が認められます。弁護士がいれば取調べの対応や被害者との示談交渉などのサポートを受けることができます。取調べは長時間に及ぶことがあり、自白を促すプレッシャーがかかることもありますので、適切に対応することが重要です。
3-3. 検察官送致(送検)
警察は逮捕から48時間以内に、検察官に被疑者を送致するかを決定します。送致されると、検察官が24時間以内に被疑者を勾留するかどうかを判断します。証拠不十分や軽微な事案であれば、送致されず、釈放されることもあります。
3-4. 勾留の判断
送致された場合、検察官は裁判所に対し、被疑者の 勾留 を請求することがあります。勾留とは、身柄をさらに拘束する手続きで、裁判官が勾留の必要性を判断します。勾留が認められた場合、被疑者は最長10日間(延長により最大20日間)、警察署の留置場や拘置所で勾留されます。勾留の判断は「罪証隠滅の可能性」や「逃亡の恐れ」があるかどうかによって決まります。初犯であり、被害者と示談が成立している場合、勾留が認められない可能性が高くなります。
3-5. 起訴・不起訴の判断
勾留期間中またはその後、検察官は被疑者を起訴するか不起訴にするかを決定します。検察官が「起訴する必要がない」と判断した場合、被疑者は釈放され、前科はつきません。また、器物損壊罪は親告罪のため、被害者の刑事告訴がないと起訴されません。被害者が刑事告訴をし、検察官が起訴を決定すると、刑事裁判に進みます。
3-6. 刑事裁判
起訴された場合、刑事裁判が開かれ、判決が下されます。
4.器物損壊罪では示談が重要
器物損壊罪において示談が重要となるのは、器物損壊罪が親告罪だからです。
親告罪は、被害者が告訴しなければ起訴されない犯罪のことを指します。告訴がなければ、警察や検察は起訴を行うことができません。このような犯罪においては、被害者が告訴を行うかどうかが、加害者に対する刑事手続きの進行に直接影響します。器物損壊罪もこの親告罪に該当し、被害者が「告訴をする」と意思表示をしない限り、加害者に対して刑事責任を問うことができません。
そのため、被害者と示談交渉をし、告訴をしない合意を取り付けることで、事件化を回避できることがあります。もし告訴されてしまった場合でも、被害者と示談が早期に成立すれば、告訴を取り下げてもらうこともできます。いずれの場合も、被害者との交渉や被害弁償が非常に重要となりますが、個人で示談交渉を進めるのは難しく、かえって対立が悪化することもあるので、弁護士に間に入ってもらうことをおすすめします。弁護士が示談交渉をすすめることで、適切な賠償額の提示や示談書の作成など、円滑な解決が可能になります。
5.依頼できる弁護士の種類
刑事事件において被疑者や被告人の弁護を担当する弁護士には、大きく分けて「当番弁護人」「国選弁護人」と「私選弁護人」の二があります。
5-1. 国選弁護人とは
国選弁護人は、国が弁護士費用を負担する制度です。経済的に弁護士を依頼できない被疑者・被告人に対し、公平な裁判を受ける権利を保障するために憲法が国選弁護人制度を定めています。しかし、国選弁護人制度は誰でも利用できるわけではなく、起訴前段階では、流動資産が50万円未満の場合に限られます。国選弁護人の費用は無料ですが、逮捕後すぐには呼ぶことはできず、勾留決定後に選任されます。また、担当する弁護人はランダムで選任されるので、ベテラン若手、どんな得意分野を持った弁護士がくるのかはわかりません。
5-2. 当番弁護人とは
当番弁護人は、各都道府県の弁護士会が運営する制度で、逮捕された被疑者が最初に1度だけ無料で弁護士と接見できる制度です。警察に逮捕されてしまった場合、警察署で「当番弁護人を呼んでください」と希望を伝えると、弁護士会から弁護士が派遣されます。ただし、これは1回のみで、2回目以降も依頼したい場合は、国選弁護人を申請するか、私選弁護人として契約するかを選ぶことになります。
当番弁護人も、国選弁護人同様、ランダムで派遣されてくるので、ベテラン若手、どんな専門分野を持った弁護士がくるかはわかりません。
5-3. 私選弁護人とは
私選弁護人は、被疑者やその家族などが自分で選び、費用を支払って雇う弁護士のことです。弁護士費用は全て自己負担となりますが、自由に弁護士を選ぶことができるため、自分が納得して信頼できる弁護士に依頼することができます。選任のタイミングも自由で、逮捕直後から、本人の家族や知人が依頼することも可能です。(もちろん、逮捕される可能性がある場合などは、逮捕される前から依頼することも可能です。)
ただし、弁護士といっても民事事件や刑事事件、企業法務、相続など、その専門分野は様々で、中には「刑事事件はほとんど対応したことがない」という弁護士がいるのも事実です。器物損壊事件は刑事事件にあたりますので、刑事事件に精通している弁護士に依頼することが大切です。
6.器物損壊事件を刑事事件専門の弁護士に依頼するメリット
それでは実際に刑事事件に精通している弁護士に依頼した場合、どのようなメリットを得ることができるでしょうか。
6-1. 刑事手続に精通しているため迅速に対応できる
刑事事件に精通している弁護士は、逮捕から起訴、裁判に至るまでの刑事手続に詳しく、迅速な対応が可能です。刑事事件に不慣れな弁護士や、自身で対応しようとすると、手続きの遅れや不利な状況を招くことがあります。
6-2. 示談交渉の成功率が高いため、不起訴を獲得できる
前述のとおり、器物損壊事件では、被害者との示談が非常に重要です。器物損壊事件は親告罪のため、被害者との間で示談が成立し、被害者に告訴を取り下げてもらうことができれば、不起訴となります。万が一起訴されてしまった後でも、被害者に示談してもらえれば、処罰が軽くなることも期待できます。刑事事件に精通している弁護士は、示談交渉の経験が圧倒的に豊富であり、適切な条件を提示して円滑に示談を成立させることができます。示談を自分自身で進めようとすると、感情的になってしまい、かえってこじれてしまったり、不利な条件を突きつけられてしまうことがあるため、専門家のサポートが不可欠です。
6-3. 取り調べの対応をサポート、不利な供述調書をとらせない
器物損壊事件に限らず、刑事事件における警察官や検察官の取り調べでは、供述内容がその後の処分に大きく影響します。逮捕されてしまった場合、すぐに弁護士に依頼しておけば、取り調べの際にどのような発言をするべきか、どのような点に注意すべきかを具体的にアドバイスしてくれます。弁護士が介入することで、取り調べにおいて、被疑者が記憶違いで誤った情報を話してしまったり、捜査機関に誤って捉えられることを防ぎます。また、捜査機関による自白の強要や不適切な誘導尋問、依頼者に不利な供述調書の作成を防ぐためにも、弁護士の立ち会いが重要です。
6-4. 裁判での適切な弁護活動
万が一起訴されてしまった場合でも、刑事事件に精通している弁護士であれば、証拠収集・分析能力、検察との交渉力、弁論のテクニックを持ち合わせているため、その時点での最善の戦略を立ててもらうことができます。
7.弁護を依頼した時の流れ
当事務所の弁護士に依頼いただく場合は、以下のような流れで対応が進みます。
- 電話・メールでのご相談:まずはお電話か公式ホームページのお問合せにてご連絡ください。初回のお電話・メールでのご相談は無料となっておりますので、少しでも不安に思われる場合は、躊躇せずご連絡ください。(緊急性の高い事案によっては、リモートで契約をさせていただき、すぐに接見に行かせていただく場合もございます。)
- 初回相談:お電話などでお伺いした事件の詳細をさらに詳しく弁護士にご説明いただき、今後の方針を相談します。正式に受任いただける場合は必要書類にサインをいただき受任となります。
- 事実関係の調査と弁護方針の決定・接見:弁護士が警察や検察から情報を収集し、事件の全容を把握し、最適な弁護方針をお伝えいたします。被疑者が逮捕勾留されている場合はすぐに接見に行き、被疑者からのお話しを伺い、必要なアドバイスを伝えます。
- 捜査対応:被疑者に不利な供述調書を作られないよう、取り調べへの立ち会いを行ったり、意見書の提出など、捜査段階での対応を行い、不起訴を目指します。被疑者に対し「接見禁止」が出ている場合は、「接見禁止解除の申立て」を行い、家族や友人などに会えるよう取り計らい、不当な勾留に対しては「勾留決定の取消し」や「準抗告」を申し立てます。
- 裁判対応:起訴されてしまった場合は、裁判に向けた準備と出頭を行います。
- 処分後の対応:状況に応じて、処分決定に対する異議申立て又は取消申立て等の対応を行います。
8.器物損壊事件でお悩みの場合は刑事事件専門の弁護士に相談しよう
器物損壊事件は、刑事事件に精通した弁護士に依頼することが重要です。特に、刑事事件専門の弁護士は示談交渉を円滑に進める能力を持っており、早期の示談・不起訴処分の獲得を目指すことができます。
ご自身やご家族が器物損壊事件で逮捕されてしまった、もしくは器物損壊事件を起こしてしまったが、逮捕されないかご不安な方、法律事務所にお電話いただくのは、はじめは勇気がいることかもしれません。しかし、おひとりで抱え込まず、まずはお電話にてお話を聞かせてください。


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