
突然、家族や知人が逮捕されたらどうしますか?
日本の刑事手続には「人質司法(Hostage Justice)」と呼ばれる深刻な問題があります。これは、否認や黙秘を理由に長期勾留を続け、自白を事実上迫る運用を指します。起訴前に最長23日間身柄を拘束され、しかも起訴前の保釈は認められない――こうした制度の実態は国際社会からも長年批判されています。
本稿では、刑事弁護を専門とするJIN国際刑事法律事務所の視点から、
- 人質司法の仕組みと問題点
- 否認で勾留が長引く理由
- やってはいけない対応
- 弁護士ができる対抗策(被疑者・被告人別)
を詳しく解説します。
逮捕から数時間~数日の初動が、人生を左右します。刑事事件に強い弁護士の介入で、身柄拘束の期間を最小限に抑える方法があります。
人質司法とは?刑事事件に関わる方が知るべき現実
人質司法の定義と国際批判(2023~2024年の動き)
「人質司法」とは、否認や黙秘を理由に身柄拘束を長期化し、供述を引き出す日本特有の刑事手続運用を指します。
国連恣意的拘禁作業部会やHuman Rights Watch(HRW)は、これを「国際人権規範違反」としてたびたび勧告しています(2023年報告)。
2024年にも、国際機関は日本の刑事制度について、
・勾留延長の濫用
・弁護人立会の欠如
・接見禁止決定の広範な適用
を問題視し、「供述偏重の捜査は冤罪の温床」と指摘しました。
逮捕された場合に起こるシナリオ
逮捕された場合、次の流れが想定されます:
・逮捕→48時間以内に送致→勾留請求→勾留決定(10日+最大延長10日)
・起訴されるまで最長23日拘束される可能性
・否認を続けると、接見禁止決定により家族とも連絡が取れないケースもあります。
なぜ否認すると勾留が長くなるのか?制度を正確に理解
刑訴法の仕組み:起訴前保釈は不可
刑事訴訟法上、保釈は起訴後にしか認められません(刑訴法第89条)。つまり、否認をしていてもしていなくても、起訴前は勾留中に自由を取り戻す方法がないのです。
否認事件で保釈が通りにくい理由(2023年法務省データ)
2023年の法務省統計によると、
・自白事件の保釈率:約30%前後
・否認事件の保釈率:約10%前後
と、大きな差があります。否認を理由に保釈が拒否される背景には、
・証拠隠滅の恐れ
・共犯者との口裏合わせ
といった判断基準があります。
※数値は法務省『令和5年版犯罪白書』に基づき、2023年時点の概算。
日本の刑事手続に潜む構造的問題
代用監獄と長期取調べ
日本では、勾留中の収容先が拘置所ではなく警察留置場であるケースが多数を占めます(通称:代用監獄)。この構造が、捜査機関の管理下で長時間取調べを続ける温床となっています。
接見禁止決定による孤立
刑訴法81条に基づき、裁判所は「罪証隠滅の恐れ」があると判断すると、弁護人以外との面会・通信を制限できます。家族との面会が遮断されると、保釈準備や社会復帰準備が困難になります。
取調べの録音録画は一部のみ義務化
2019年改正で、録音録画(可視化)が義務化されたのは裁判員対象事件など限定的範囲。大半の事件では、取調べの全過程が記録されないまま進みます。
逮捕・勾留されたら絶対にやってはいけない4つのこと
- 弁護士を依頼せず取調べに応じる:不用意な供述や署名は、後で覆せません。刑事弁護の専門家による助言なしで取調べに臨むのは危険です。
- 黙秘権を誤解する:黙秘権は重要な権利ですが、戦略なしの黙秘は逆効果になることも。弁護士と相談して方針を決める必要があります。
- 接見禁止を放置する:家族や支援者と連絡できない状態が続くと、保釈準備や社会的信用回復が遅れます。弁護士は接見禁止の一部解除申立てを行えます。
- 調書に安易に署名・押印する:誘導や威迫を受けた供述調書に署名してしまうと、公判で覆すのは困難です。
弁護士ができること
被疑者段階(逮捕直後~起訴まで)
犯罪の疑いをかけられて逮捕された場合、被疑者とされる方は身体を拘束されてから最長72時間、自由を奪われるため、逮捕後48時間以内の送検、送検後24時間以内の勾留判断の間に弁護人が介入し、法的支援を受けることがその後の展開を大きく左右します。
具体的には、黙秘権の行使助言、早期釈放の戦略の立案、準抗告や接見を通じて支援します。事件の送検があれば、弁護人は送検後の勾留延長阻止や不起訴に向けた交渉を始めます。
被告人段階(起訴後)
不起訴に向けた交渉として、依頼者との接見、関係者への聞き取り、捜査機関が収集した証拠の分析より犯罪の立証可能性を評価します。軽微な事件か、否認事件か、重大事件かなどを踏まえて、検察官との直接交渉、被害者とのベストな示談交渉を重ねます。示談が難しい事件でも、部分的和解や、情状改善で起訴猶予を模索します。
勾留決定に異議を申し立て身柄解放を求め、これが成功すれば、検察への圧力となり、不起訴処分の交渉が有利に働く可能性があります。検察官との関係構築力も弁護人には求められます。弁護人が誠実かつ具体的な根拠を示すなど、検察官の信頼を得ることで、再犯リスクなどの懸念点を事前に把握でき、最善の結果につながります。
保釈請求の活動として、依頼者との接見、家族や関係者への聞き取りを行い裁判所が重視する「罪証隠滅のおそれ」「畏怖行為」などを否定する具体的な根拠を集めます。起訴状や証拠の分析より、検察官が提出した証拠や公訴事実等から保釈請求に対する検察側の反論を推測します。勾留決定時の裁判官の判断根拠を精査し、反論のポイントを整理して説得力の高い保釈請求書を仕上げます。さらに、初回請求が却下されやすいため、裁判所の傾向、検察との交渉も視野に入れつつ、慎重な準備と綿密な戦略を練り上げます。起訴直後や証拠固定が進んだ段階で請求するなど、タイミングを見極めて保釈請求の成功率を高めます。
当事務所の解決事例
共犯者10数人の中で、ただ1人保釈許可決定を勝ち取った事例
東南アジアのある国を拠点とした大型詐欺グループのうちの1人の方を弁護した事案でした。実刑判決が見込まれること、海外を拠点に生活をしていたこと、共犯者が多数にのぼっていることなど、保釈請求をしても許可されない可能性が高い事案でした。
しかし、日本に住むご家族の協力を得たり、ご本人の特殊事情を踏まえた保釈請求をしたことで、共犯者10数人の中で唯一保釈許可決定を勝ち取ることができました。身柄を解放したうえで裁判に臨むことができたので、裁判を打ち合わせをしたり、私生活を充実させて精神的な安定を保った状態で裁判に臨むことができたと思います。
まとめ―逮捕・勾留されたら初動が命運を分ける
日本の刑事制度には「人質司法」と呼ばれる構造があり、否認を理由に、最長23日間の拘束+保釈困難という現実が待っています。
JIN国際刑事法律事務所は、逮捕直後から起訴後まで依頼者の権利を守ります。逮捕・勾留に直面したら、信頼できる弁護士に相談することが、ご自身やご家族を守ることにもつながります。


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