セルフレジで万引きを疑われたら?「うっかり」と犯罪の境界を刑事事件専門弁護士が解説

近年、スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどでセルフレジが急速に普及しました。便利になった一方で、セルフレジを利用した万引き事件も増加しています。もっとも、セルフレジの事件には、最初から料金を支払うつもりがない悪質なケースだけでなく、「スキャンを忘れてしまった」「操作方法が分からなかった」「子どもが商品を持っていたことに気付かなかった」といった事案も少なくありません。しかし、店側が「故意に盗んだ」と判断すれば、警察に通報され、窃盗事件として捜査される可能性があります。今回は、セルフレジで万引きを疑われた場合に知っておきたいポイントを、刑事事件専門弁護士の視点から解説します。
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セルフレジで万引きになるケースとは
セルフレジでは、利用者自身が商品のバーコードを読み取り、精算を行います。 店員が一つひとつの商品を確認して会計を行う従来のレジとは異なり、商品の登録から支払いまでを利用者自身が行うため、その利便性の一方で、会計漏れや不正行為が発生しやすいという特徴があります。
セルフレジで窃盗と判断される可能性がある行為としては、例えば次のようなものがあります。
• 商品をスキャンしないまま持ち帰る
• 一部の商品だけをスキャンし、残りは会計せずに持ち帰る
• 高額商品を安価な商品のバーコードで読み取って精算する
• 商品を袋やバッグに入れたまま会計せずに店外へ出る
• カゴの下やベビーカーなどに置いた商品を会計しないまま持ち帰る
このような行為は、故意に代金を支払わず商品を持ち去ったと判断されれば、窃盗罪として捜査の対象となる可能性があります。
近年では、多くの店舗で高性能な防犯カメラが設置されており、セルフレジ周辺の映像も鮮明に記録されています。さらに、AIを活用した不正検知システムを導入する店舗も増えており、「商品を袋に入れたのにスキャンされていない」「商品の動きとレジ操作が一致しない」といった不自然な行動をシステムが検知すると、店員へ通知される仕組みも普及し始めています。そのため、「少額だから問題にならないだろう」「見つからなければ大丈夫だろう」と考えることは非常に危険です。実際には、後日、防犯カメラの映像などから身元が特定され、警察から事情聴取を求められるケースも少なくありません。
「うっかり」でも警察沙汰になることはある
セルフレジの特徴は、店舗側から見ると「故意に代金を支払わなかったのか、それとも単なる会計ミスだったのか」が、その場では判断しにくいという点にあります。
利用者本人としては「単純なミスだった」「支払うつもりだった」と考えていても、店舗側から見れば、意図的に商品を会計せず持ち去ろうとしたように見えてしまうことも少なくありません。そのため、会計漏れが判明した場合には、店舗の判断で警察へ通報されるケースがあります。
例えば、次のようなケースです。
• 商品が重なっていて1点読み取れていなかった
• カゴの下に置いていた商品を会計し忘れてしまった
• 子どもが商品を持ったままになっていることに気付かなかった
• セルフレジの操作に慣れておらず、一部の商品だけ会計が漏れてしまった
• 商品をスキャンしたつもりになっていたが、実際には読み取れていなかった
このような事情があったとしても、その場では店舗側が故意の有無を判断できないため、店員から声を掛けられたり、事務所へ案内されたりしたうえで、警察を呼ばれることがあります。
さらに、警察の捜査では、防犯カメラの映像やレジの操作履歴、商品の持ち方、店内での行動、店舗から出ようとした状況など、さまざまな事情を総合して故意の有無が検討されます。単に「商品が会計されていなかった」という事実だけで結論が決まるわけではありません。
一方で、本当に故意がなかったのであれば、その事情を客観的な証拠や状況に基づいて適切に説明することが重要です。焦ってその場で曖昧な説明を繰り返したり、「早く帰りたい」という思いから本意ではない内容を認めてしまったりすると、その後の捜査に大きな影響を及ぼすおそれがあります。
刑事事件では、「故意があったのか」という点が処分を左右する重要な争点になることが少なくありません。セルフレジでの会計漏れについても、一律に万引きと決めつけるのではなく、当時の状況を丁寧に整理し、客観的な証拠を踏まえて対応方針を検討することが大切です。
「支払うつもりだった」は必ず認められるとは限らない
セルフレジの事件では、「支払うつもりだった」「会計を忘れていただけだった」という説明がされることは少なくありません。しかし、そのような説明をしたからといって、直ちに警察や検察が故意を否定してくれるわけではありません。刑事事件では、本人の説明だけでなく、当時の状況や客観的な証拠を総合的に検討して、「故意に商品を持ち去ろうとしたのか」が判断されます。
例えば、警察は次のような事情を確認しながら捜査を進めます。
• 商品をどのように持っていたのか
• 商品を袋やバッグに入れたタイミング
• 他の商品は適切に会計していたのか
• セルフレジでどのような操作をしていたのか
• 店舗の出口を通過したか、あるいは店外まで出たのか
• 店員から声を掛けられた際の受け答え
• 防犯カメラにはどのような行動が記録されているのか
• レジの操作履歴や購入履歴と行動が一致しているか
• 過去にも同様の行為が確認されていないか
これらの事情を総合して、「うっかり会計が漏れただけなのか」「代金を支払わずに持ち去る意思があったのか」が判断されることになります。
一方で、防犯カメラの映像やレジの記録が、かえって利用者に有利な証拠となることもあります。例えば、商品をスキャンしようとして操作に戸惑っている様子や、他の商品については適切に会計を済ませている状況、店員を探すような行動などが映像から確認できれば、「故意に盗もうとしていた」との評価を覆す重要な事情になる可能性があります。
刑事事件では、取調べの段階でどのような説明をするかも非常に重要です。「支払うつもりだった」という一言だけでは十分ではなく、なぜ会計漏れが起きたのか、そのとき何を認識していたのかを、客観的な事情と矛盾しない形で説明することが求められます。
反対に、焦りや不安から曖昧な供述をしたり、その場の雰囲気に流されて本意ではない内容を認めてしまったりすると、その供述が後の捜査や処分に大きな影響を及ぼすことがあります。一度作成された供述調書は、その後の手続でも重要な証拠として扱われるため、安易な対応は避けるべきです。
店舗で声を掛けられたらどう対応すべきか
店員から「会計がお済みですか」「少し確認させていただけますか」などと声を掛けられた場合には、まずは落ち着いて対応することが大切です。驚きや動揺から感情的になったり、その場を立ち去ろうとしたりすると、本来は単なる会計ミスであったとしても、不審な行動として受け取られてしまう可能性があります。
また、店員との間で口論になったり、「絶対に払うつもりだった」「そんなはずはない」と繰り返し主張したりすることも、必ずしも問題の解決につながるわけではありません。店舗側はその場で故意の有無を判断する立場にはなく、多くの場合は事実関係を確認したうえで、必要に応じて警察へ引き継ぐかどうかを判断します。
一方で、焦って事情を説明しようとするあまり、その場その場で異なる説明をしてしまうケースも少なくありません。例えば、「スキャンしたと思った」「忘れていた」「気付かなかった」など、意図せず説明が変わってしまうと、後になって供述の信用性が問題となることがあります。
その後、警察官が駆け付けた場合や、後日警察署への出頭を求められた場合には、事情聴取を受けることになります。この際、「早く帰りたい」「できるだけ穏便に済ませたい」「これ以上大事にしたくない」という気持ちから、本意ではない内容を認めてしまう方も少なくありません。
しかし、刑事事件では、一度行った供述がその後の捜査や処分に大きな影響を及ぼします。供述調書が作成されると、その内容は検察官による処分の判断や、場合によっては裁判でも重要な証拠として扱われることになります。そのため、その場の雰囲気に流されて、十分に考えないまま供述することは避けるべきです。
示談で終わるケースもあれば、争うべきケースもある
セルフレジの事件だからといって、すべての事件で同じ対応をすればよいというわけではありません。事件の内容や証拠の状況、本人の認識などによって、取るべき対応は大きく異なります。
例えば、故意に商品を会計せず持ち去ってしまった場合には、事実を前提として早期に反省の意思を示し、被害店舗との示談交渉を進めることが重要となるケースがあります。示談が成立し、被害回復が図られたことが適切に評価されれば、不起訴処分となる可能性も十分にあります。
一方で、本当に会計漏れや操作ミスであり、窃盗の故意がなかった場合には、対応は全く異なります。そのような事件で、不安や焦りから「盗みました」と不用意に認めてしまうと、本来であれば争う余地があったにもかかわらず、不利な供述がその後の捜査や処分に影響を及ぼすおそれがあります。
刑事事件では、「認めて早期解決を目指すべき事件」と、「故意がないことを丁寧に説明し、適切に争うべき事件」とを見極めることが非常に重要です。その判断を誤ると、本来得られたはずの結果を逃してしまう可能性もあります。
だからこそ、セルフレジで万引きを疑われた場合には、画一的な対応をするのではなく、事件の内容や証拠関係を十分に検討したうえで、その事件に最も適した弁護方針を早い段階で立てることが重要です。
セルフレジ万引きを疑われたらJIN国際刑事法律事務所へご相談ください
セルフレジで万引きを疑われた場合、「少額だから大丈夫だろう」「後で説明すれば誤解は解けるはずだ」と考えてしまう方も少なくありません。しかし、警察の捜査が始まった後の対応によっては、その後の処分に大きな影響を及ぼすことがあります。
JIN国際刑事法律事務所では、セルフレジでの万引き事件についても、一つひとつの事案を丁寧に分析し、それぞれの状況に応じた最適な弁護方針をご提案しています。
故意に商品を持ち去ってしまった事案であれば、被害店舗との示談交渉を迅速に進め、不起訴処分を目指します。一方で、本当に会計ミスや操作ミスによるものであり、窃盗の故意が認められない可能性がある事案では、防犯カメラの映像やレジの記録などの客観的な証拠を踏まえながら、依頼者にとって最善の対応を検討します。
また、警察から事情聴取や出頭を求められている場合には、取調べへの対応方法や供述のポイントについても具体的にアドバイスし、不用意な供述によって不利益を受けることがないようサポートいたします。
刑事事件では、初動対応が結果を大きく左右します。セルフレジで万引きを疑われた、店舗から連絡を受けた、警察から事情聴取を求められているなど、お困りの際は、一人で悩まず、お早めにJIN国際刑事法律事務所へご相談ください。刑事事件に特化した弁護士が、状況を丁寧にお伺いし、最善の解決に向けて全力でサポートいたします。
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神奈川大学法学部法律学科、神戸大学法科大学院を経て、最高裁判所司法研修所(76期)修了。Authense法律事務所での執務を経て、弁護士法人JIN国際刑事法律事務所に参画。 これまで、殺人、殺人未遂、強盗致傷、不同意性交致傷、麻薬密輸などの重大刑事事件を多数担当し、捜査段階から裁判員裁判まで一貫した弁護活動を展開。綿密な証拠分析と高度な法廷技術を強みとする。 2024年より裁判員センターおよび刑事弁護委員会に所属。新規登録弁護士向け研修や裁判員裁判を前提とした法廷弁護技術研修の講師も務めるなど、刑事弁護実務の発展と後進の育成にも尽力している。
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