国選弁護人とは、その名のとおり、国が選任した弁護士のことを指します。
日本国憲法 は 第37条 3項で、「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。 被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。 」と定めており、 経済的困窮などの理由で弁護人を依頼することができない場合に、国の費用で弁護人を選任することができます。
一方、私選弁護人とは、費用を自分で負担して、直接選任する弁護士のことを指します。
この記事では弁護士を依頼するにあたって、国選弁護士・私選弁護人のどちらを選ぶべきなのか、解説いたします。
1.国選弁護人
前述のとおり、国選弁護人は経済的困窮などの事情がある場合に、国(裁判所)が選任する弁護人のことをいいます。
選任のタイミング
あなたやご家族が逮捕された場合、まずは警察で取り調べを受けることになります。国選弁護人は、この時点では依頼することができません。
※逮捕中は当番弁護という別の制度があり、国が指定する当番弁護士に、1度だけ接見に来てもらい無料でアドバイスをもらうことができます。
逮捕から72時間以内に、検察官が裁判官に対して勾留請求(まずは10日間の身柄拘束を求める手続き)をします。裁判所が勾留決定をして、被疑者の身柄拘束が決まった後に、ようやく国選弁護人が選任されることになります。
費用
国選弁護人の弁護士費用は基本的には無料です。
明らかに資力があると判断されるときは、裁判所の判断で例外的に費用負担を言い渡される場合もあります。
選任方法
国選弁護人は、国が弁護士を選任しますので、選ぶことはできません。どんな弁護士が派遣されてくるのかはわからず、国選弁護人から私選弁護人へ変更することはできても、国選弁護人から別の国選弁護人への変更は基本的にできません。解任することも自由にできません。
2.私選弁護人
私選弁護人とは、費用を負担して自ら選ぶ弁護人のことをいいます。
選任のタイミング
私選弁護人は、あなたやご家族が逮捕された場合、もしくは逮捕前からでも、いつでも選任することができます。
刑事事件では、逮捕後早期の対応が必要となりますので、逮捕後すぐに私選弁護人に依頼することで、早期の釈放が望めます。勾留される前の数日のうちに身柄を解放されることができれば、会社や周囲に逮捕の事実を知られずに済むこともできます。
費用
弁護士費用はすべて負担することとなります。
選任方法
国選弁護人とは違い、自ら弁護人を選ぶことができます。
実は弁護士といっても、民事・刑事・税務・企業法務など、専門分野があり、刑事弁護に精通していない弁護士が国選弁護人になることも数多くあります。また、経験豊富な弁護士にお願いしたいと思っても、経験の少ない若手の弁護士が選任されることもあります。
この点、私選弁護では刑事事件の実績がある弁護士に依頼すれば、状況に応じて適切な弁護活動が受けられ、早期の釈放・不起訴などの結果が期待できます。
国が指定した国選弁護人と合わない、適切な弁護活動を行ってくれない場合なども、途中から私選弁護人に変更することが可能です。
ネットに溢れた情報だけでは判断できない場合、知り合いの弁護士に刑事弁護の専門家を紹介してもらうなどすれば、本当の専門家を見つけることができるかもしれません。同業者は同じ業界の専門家をよく知っているものです。
3.どちらを選ぶべきなのか
国選弁護人の最大のメリットは、費用負担がないこと。しかし、どういった人物が自分の弁護人になるかで、今後の人生が左右してしまうことも事実です。国選弁護人にも、弁護士として依頼者のために懸命に弁護活動をする義務がありますが、実際にランダムで選ばれている国選弁護人に「やる気が感じられない」「刑事事件の知識や経験に不安を感じる」といって当事務所に相談にいらっしゃる依頼者の家族も少なくはありません。あなたやご家族が逮捕されてしまった場合、どちらを選ぶべきなのかは、双方のメリットデメリットを考えた上で検討すべきです。
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